ワームの不思議

ワームはルアーじゃない。

と、思っている人がおる。え、え？ぼ、僕じゃないよ。

ルアーは、いわゆる疑似餌の総称である。で、あるから、プラグだろうがワイヤーベイトだろうが、軟体の怪しい物体であろうが、全部ルアーと呼ばれる。「今日はルアーには食いが悪いからワームにしよう」などと言ってはいかんのである。

まぁ、細かいくてどうでもいい突っ込みはこのくらいにするが、それは兎も角、ワームは、プラグに対していまいち地位が低いと思う。

どうもアングラーは、ワームは釣れて当たり前であると思っている節がある。確かにワームは、ゆっくり動かしても見切られ難いために、厳しい条件下でバスに食わせるには向いている。人間でも、草臥れている時には固い煎餅よりも柔らかい饅頭の方が食い易いだろう（そうか？）。バスの活性が低いと思ったら、迷わずワームを投入すべきである。

さて、ワームというのは実に不思議なルアーだと思う。

はっきり言うが、ワームなぞ、僕にはどれも同じに見える。少なくとも、ストレートワーム、グラブワーム、ホッグワームなどと種類があるのは分かるが、そのカテゴリー内においてはどれも同じに見えるのである。プラグの様に際立ったアクションの違いを見せる訳でもない。どれもふにょふにょ、ぺにょぺにょしている。

ところが、こいつが不思議なことに、モノによって極端に釣果に違いが出るのである。隣り合わせに同じようなグラブワームを投げていても、極端にバイトが集中するワームというものがあるのだ。

ぶっちゃけて言えば、ゲーリーヤマモト社製のワームは釣れる。先日、バス管理釣り場でまざまざと違いを見せ付けられた。なにしろ、いろんなワームを使って釣れずに苦しんでいる横で、お子様がカットテールを使って爆釣しているのである。あれは、どう考えてもワームのパワーだ、と思いたい。

ゲーリワームは高比重である。しかも、小さく千切ってもしっかりと沈む。その沈降速度の絶妙さがまずは釣獲能力の源であろうとは思う。しかし、それでは説明がつかないことが多いのも、事実である。

初心者の頃は、ワームに突起やヒレ、ヒゲなどがついていればいるほど釣れる、と思い込みがちである。しかし、実際には唯の丸棒といった感じのワームが恐るべき威力を発揮することも多い。ストレートワームをボトムに落してずる引きさせるのは特に活性が低いバスには効果的である。プラグなどは基本的に動けば動くほどいいルアーなのだが、ワームの場合は全然そんな事はないのである。また、食わせのルアーであるから、生物に似ていれば似ているほどよいのか？といえば、これもそうとは言い切れない。

基本的には、柔らかいマテリアルを使っているワームの方が釣れること。スローフォールの動きにバスが弱いこと、は言えると思う。また、釣れるワームに共通するポイントは、偏った動きをしないことである。アクションを加えると変幻自在のアクションをしてみせる。釣れないワームは何をやっても同一のアクションしかしてくれないものだ。これもプラグとは選別基準が異なるポイントである。

ワームは遅い釣りだけに、カラー選択が重要になる。バスがじっくり見るからである。チャートリュースカラーと赤系統のワームは、時折信じられないような爆発力を見せるので一応バッグに忍ばせておくべきだ。しかしながら、やはり基準は水なじみの良い色であろう。緑、茶系統のワームはどこへ行っても使える。また、マッチザベイトもやはり有効であり、白魚がいるフィールドでは透明なワームが炸裂したりする。

僕は基本的には臭い付きワームが嫌いである。その割りにはメガバス社のヴァイオスワームを好んで使っているが、あれはあのワームが破格に丈夫で経済的だからである。臭いが無ければもっと良いのにと思っている。

臭い付きワームは邪道だ。ルアー釣りは、ルアーにしか持ち得ないアピール力で餌では釣れない魚を釣ることにその神髄があるべきである。ルアーを餌に近づけて何になろうか。それなら素直に餌を使うべきではないか。

そして、臭い付き、味付きワームがとりわけ釣れた、という経験は個人的には皆無である。逆に、ヴァイオスからゲーリに代えたら釣れたということの方が多い。これは、ある条件下ではワームの臭いはプラグのラトル音に相当するような「警報」になってしまうからではないかと考えている。見えギルで実験した所、臭い付きワームを投げ入れたら一瞬で逃げ散ってしまったということもあった。それゆえ、僕は臭い付きワームの釣獲能力について懐疑的なのである。もっとも、効果的な場面もあるであろうことも否定できないが。

ワーム、と一言にいっても、１０インチもあるような巨大ワームから、１インチも無いようなペレット型ワームまであり、こんな風に一括りにして語るべきではないのかもしれない。また、形状によってバスに対するアピールがどのように変るのか？固さ、沈降速度の違いはバスに何を訴え掛けるのか？など、はっきり言って想像もつかないような研究課題がまだまだ隠されているのがワームというルアーなのである。

それにしても、アングラーはワームに対して冷淡である。自己最高記録を獲得したプラグは、アングラーなら誰しも神棚に飾って日々拝むものだが、ワームでそんなことをしている人は、見た事が無い。