衝撃のカットテール

  宇宙一釣れるワームと言えば、ゲーリーヤマモト社製の4インチカットテールだと思う。

  なにせ、釣れる。他のワームを使い、何をどうやっても、このワームに勝る釣果を叩き出す事が出来ない。このワームは、バスが集団でいた際に、なぜか良いサイズのバスを選んで釣れる感じがする。根拠はないが、そんな気がする。

  バス釣りを再開してすぐのこと。僕は、どうもバスってものは小さいワームなら喜んで食うらしいわい、と気が付いてから、いわゆるメバル用ワームをジグヘッドに付けて使っていた。これは、釣れた。ただし、子バッチが。しかし、当時の僕はこれに十分満足していた。というのは、当時の自己記録は25cmくらい。でかいバスを選んで釣ろうという概念からしてなかったのだ。つまり、釣れればなんでも良かったのである。

  この当時、僕のバス釣りの先生は某アツ坊氏であった。と、いうのは、この当時の僕とキャナピーは、バス釣りもフナ釣りも一緒だんべ〜!というノリでバスを釣っていたのである。バス釣り雑誌など見た事も無かった。ルアーは全てホームセンター製。そんな僕らに対してアツ坊は研究家であった。きちんと雑誌か何かでバス釣りを勉強していた。そんな彼が、我々の前に持ち込んだのが、カットテールのワッキーリグだったのである。

  これが、我々のメバルリグを粉砕してのけるのである。唖然とするくらい釣っていた。しかも、当時の僕らにしてはモンスタークラスの30UP、35UPを連発しやがったのである。

  うがった見方をすれば、その時の釣果の要因にはカットテールの飛距離が重要なポイントだったようには思える。メバルリグはさっぱり飛ばない。岸際に3人も並んでハイプレッシャーだった状態では、プレッシャーの掛からない沖にバスが待機していた可能性はある。

  しかし、そんな事は知る由も無い僕とキャナピーには「カットテールのワッキーリグすげ〜!」というインパクトだけが頭に刻み込まれてしまったのは無理からぬ事だと思って頂きたい。ちなみにこのアツ坊氏、この後もデスアダーやらアイバーホグやらで僕らに同様の衝撃を与え続けているので、実は凄いのは彼の腕だったのではないかという疑いも有るのだが、それを僕らが認定する事はないであろう。

  とにかく、驚いた僕はカットテールを釣具屋に買い求めたのだが、ここで衝撃の事実を知る事になる。

  なんと、カットテールは宇都宮(車で片道45分)まで行かなければ買えない代物だったのである。田舎というのはこういう時に困る。しかも、値段はこれまで使用してきたワームに比べればべらぼうに高い。

  しかも、釣り場に持ち込んで初めて知ったのであるが、カットテールは脆いのである。キャストした瞬間に吹っ飛んで行く事も数知れず、おまけにワッキーリグは根掛かり易い。

  しかし、それらの欠点をカバーして余りあるほどの釣果を、カットテールはもたらしてくれた。初の川バス35UPをもたらしてくれたのもこいつだったし、川スモールが入れ食いになったのもこいつだった。未だにワームの中では文句無くNO.1だと思っている。と、いうよりは、ワームはこれさえあればオッケーだとさえ思う。

  カットテールは何故釣れるのかを独断と偏見で考察してみよう。ゲーリーヤマモト社製品の特徴である高比重加減はここでは置く。それならば同社のスリムヤマセンコー辺りでも同様だからである。カットテールはスリムヤマセンコーよりも様々な状況に対応する。なぜなのか。

  それはやはり、その独特の形状、先が太くてテールが細い、いわゆるテーパー形状に理由が求められるだろう。これを特にワッキーで使うと、頭と尻尾が違うテンポで震える事になる。これに対してスリムヤマセンコーなど前後で太さに違いが無いワームは、前後のテンポが同じに動く。

  違うテンポで動いた方が、動きに不規則性が生ずるのは言うまでもない。特にバスがワームをじっくり観察するボトムシェイク系の釣りで、カットテール・ワッキーが無類の強さを発揮するのはこのためではないかと考えている。この場合、動きが違い過ぎても良くないらしい。カットテールの前身、ティーズワームのテールカットチューンを考え付いた人も恐らくそれに気が付いたのではないか。想像というより妄想だが。

  僕が最近好んで使っているのは赤黒のツートンカラーである。これは、なぜか夏場に炸裂した。スモールにも良かった。スモーク、シナモン、ウォーターメロンなども定番だが、これらはクリアに近い水質に良かった気がする。チャートカラーやレッドを使ってみた事もあるが、釣れ方が偏向的すぎたので最近は使っていない。

  カットテール・ワッキーを覚えてからしばらくはこればかりやっていたわけだが、その内「1mmづつ動かす」なぞという極悪メソッドを編み出したキャナピーに釣果で負け始め、面白くないので僕はハードルアーの釣りに転向してしまった。06年には意識してワームを使うようにしたのだが、その際にどうしても頼りにしてしまうのはやはりカットテールである。もしかしたらこれを越えるワームは出ないかもしれない。

  ゲーリー社に注文があるとすれば、このワームの機能はそのままに、生分解機能の付加することであろう。水中に放置され、すっかり育ってしまったカットテールを見ると、かつて自分がふっ飛ばした奴なのではないかという疑念に苛まれる。あと、出来ればもうちょっと丈夫にしてお財布に優しくなれば言う事はない。




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