水温について

  水温計を持っていないオカッパリ・アングラーは、今すぐ買ってくるべきだ。

  特に春先、水温の1度の違いは釣果に大きく関わってくる。水温が零下に近い事を知らずに、そのフィールドで粘ってもまず釣れない。また、そんなフィールドでも場所によって極端に水温が違う場合もある。インレットだけが極端に暖かい(冷たい)などという時もあるだろう。それらの情報を得るには水温計でこまめに水温を計る以外に無い。

  水温5度の法則という奴をご存知だろうか。水温5度を切ったらシャローではバスが釣れないという法則で、確かかの今江プロがビデオで言っていたことなのだが、これには科学的な根拠がある。

  水というのは、水温4度で比重が最も重くなるらしい。つまり、普通は4度の水が最も深い場所に溜まるということだ。表水温が5度以上ある時、4度の水は深場に溜まっている訳だから表水温の方が高いということになる。よって、バスは少しでも温かい水を探してシャローに上がっていると考えられるわけだ。ところが、表水温が4度以下になった場合、4度の水はやはり深場に溜まっているのだが、シャローの水はそれよりも冷たくなっていることになる。こうなるとバスはより暖かい水を求めてディープに落ちてしまう。

  故に、冬はディープと安易に決め付けてはいけない。水温を計り、表水温が4度以下であればディープを攻めるべきだが、そうでなければシャローも捨てられないのである。

  水は、例外(どシャローの場合は水底の方が先に暖まる)はあるが水面近くから温度変化が始まる。空気の場合は光の透過度が高く太陽光が突き抜けてしまうので、空気は地表から暖まるのだ。しかし、水は空気よりは太陽光を吸収し易いので、水が直接暖まるのである。この理屈で、クリアであればあるほど水は暖まり難いということが言えるだろう。逆に冷える場合だが、この場合は最初に空気が冷え、それに接する水面が冷える。

  このため春先、水温上昇中には水面に近い部分の水温が最も高くなる。春先のバスが意外に浮いているのはこのせいだ。ただし、空気が冷たかったり風があったりすると、完全な表層は温度が下がってしまう。このためレンジが少し落ちて中層にサスペンドすることになる。逆に秋、日に日に気温が下がって行く季節には、バスはどんどんディープに落ちて行くわけだ。もっとも、表水温が下がり過ぎ、それ以下に沈んでいる水との温度差が大きくなると、水の逆転現象が起きる。これがいわゆるターンオーバーである。

  冷たい話ばかりしていると寒くなるので暖かい話もしよう。バスの適水温は大体15〜20度である。20度というと、触って分かるほどぬるい水だと言って良い。晩春から初夏に掛けての水温がこれに該当する。

  ところが真夏になると、水温は25度を突破する。野池では30度に達することもあるのだ。30度の気温で生活することを思えば、その水温でのバスの気分が分かろうと言うものである。真夏にバスが釣れないのは無理も無いのだ。涼しい朝マズメ、夕マズメに突然バスの活性が上がるのは、真夏の夜に夕涼みに出る縁側ではビールが美味いのと同じ理由だと思えば良い。

  暑い時、人間はどうするか?日陰に入る。風通しの良い場所に行く。クーラーをつける。かき氷を食う。ビールを飲む。バスも大体同じである。ビールは飲まないが、冷たいワームがあれば喜んで食うかも知れん。

  バスは水温が適水温を越えてしまうと、とにかく水が動く場所、インレット、アウトレットにいたがるようになる。更に温度が上がると、リザーバーなどではディープに落ちてしまう。ディープが存在しない野池のバスは?これはもう日陰。とにかく太陽が当たらないヘビーカバーの奥でぐったりしていると考えられる。人間だって暑すぎる日には食欲が落ちてしまう。真夏の野池が釣れないのは多分そんな理由によるのだろう。個人的経験では、水温が30度近いような日の真っ昼間に、野池でバスが釣れたことなどほとんど無い。

  水温が高くなり過ぎると、プランクトンが異常発生して水中の酸素量が極端に減ってしまう事がある。海の赤潮と同じであるが、富栄養化の進んだ水域で発生し易い。水が動かない護岸野池などでも良く見られるが、ひどくなると魚が大量死することさえある。そこまでひどくならなくてもバスの活性が落ちて釣れなくなってしまう。水が白濁りしている、臭い、なんだかぬるぬるしているなどという時はこの現象を疑ってみた方が良い。

  バスは人間臭いお魚であると言われる。寒い時には暖かい場所、暑い場所には涼しい場所にいたがる。バスの適水温は人間が快適だと感じる気温と非常に良く似ているのだ。水温を計り、その水温を気温に置き換えた時自分がどんな感じになるかを考えればバスの居場所を掴み易くなる筈である。

  もっとも「気温5度の時はこたつに入って猫抱いてるよなぁ」とか、「いつもエアコンの効いた部屋にいるから分からねー」などとぬるいことを言う人には、バスの気分も分からないかもしれん。




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