新作ルアー
メーカーが新たに発売したルアーは、言うなれば新たにデビューしたアイドルである。
アングラーなら誰しも注目し、どんな機能、能力を持っているかを知りたがる。釣具屋でも一番いい場所を与えられ、ちやほやされ、売り切れる。
しかしながら、そのルアーが真の人気ルアーとなり得るかどうかはそのルアーの実力次第である。モノによっては発売して1年も経たない内にワゴンセール行きとなり忘れ去られる。1年に発売される新作ルアーの内、数年後までどうにか生き残れるのは、ほんの数個に過ぎない。
さて、新作ルアーが定番ルアーとして生き残るためには幾つか条件がある。
まず、既存のルアーに無いような新機能を持っていることである。それはアクションでも、飛距離でも、色でも、大きさでもなんでもいい。兎に角、タックルボックス内既に存在するルアー達を何処か上回れば、定番たちの座を脅かすことが出来るのである。
これが簡単ではない。現行発売中のルアーが一体何種類あるのかはしらないが、それが膨大な量である事は釣具屋に行けば容易に理解出来る。そのルアー達が為し得なかった新機能を一つ見つけ出すだけでも容易ではない筈だ。
多いのが、ヒレをつけた、リブを立てた、凹みをつけたなどという見かけ倒しでアクションなどにはまったく新規性が見られないというパターンである。また、ある面を突出させてしまったためにバランスが崩れ、真っ直ぐにさえ泳がないルアーもある。
次に重要なのは、釣れることである。これはまぁ、言うまでもない。更に付け加えるならば誰にでも釣れるルアーでなければならない。
特殊な使い方をしなければ釣れないルアーというのは、偏った人気を博す可能性はあるかもしれないが、やはり定番にはなり難い。定番にならなければ一部の人に惜しまれつつ廃盤の憂き目を見ることになる。また、特殊な状況でしか釣れないルアーというのも駄目である。その意味で言って近年流行のビッグベイトは危うい。
あと言えるのは、使い易いルアーは定番になり易いということである。
釣獲能力の点で、固定重心のクランクベイトは重心移動のクランクを上回るといわれている。しかしながら、市販のクランクベイトのほとんどは重心移動を搭載している。これはやはり重心移動搭載モデルの方が固定重心のモデルよりも使い易いからである。また、持ち運び難い、変な使い方をするとすぐ壊れる、変形し易い、真っ直ぐ泳がせ難いというようなルアーは市民権を獲得し難いものである。
ここまで述べれば新作ルアーを定番にまで育てるのが如何に難しいかが御分かり頂けると思う。しかし、それならばなぜ、毎年毎年店に並びきらないほどのルアーが次々を発売されるのであろうか?それら全てが新規性を持ち、以前のモデルよりも釣れると謳う訳である。おかしいではないか?
まぁ、それは宣伝というもので、正当な企業努力であるから文句を言ってはいけない。宣伝が全て嘘なのか?というとそうとも言えないのが難しい所ではある。どんなルアーもまぁ、魚が釣れないということはない。ゴミの様なルアーも時合いが嵌まれば爆釣する可能性さえないとは言えない。また、新作ルアーはなぜかよく釣れるものである。バスが見慣れていないからであろう。ただし、そういう新作神通力は往々にして長続きしないものである。
近年流行の固定重心、ノンラトルのクランクベイトに見られるように、かつて発売されていたようなルアーを復刻、もしくは最新技術でリニューアルした様なルアーがある。これをパクリと言う人もいるがそれはどうであろう?旧モデルに何かを付け加えて良くなっているならそれはそれで良いのではないだろうか。駄目ならば消えて行くだけである。ルアーの大まかなカテゴリーはこの20年ばかりほとんど変化が無い。その枠内で磨かれ、進化してきたのがルアーの歴史である。模倣を否定すればルアーの歴史は成り立たなくなると思う。
発売当初はまるで釣れず、タックルボックスの片隅に忘れ去られていたルアーが、ある日慰みに使ってみたら意外に釣れるルアーであることが判明したことが幾度かある。また、これはワームに多いのだが、何に使っていいのかさっぱりというようなルアーが、あるリグを覚えた瞬間爆釣ルアーに変身し、手放せなく成る事もある。こういう経験をすると新作ルアーを見た目や噂で軽軽に判断できなくなってしまう。
人気メーカーの新作ルアーは非常に手に入り難い。時に抱き合わせ、プレミア価格という取り扱いを受けていて憤慨を禁じ得ないこともある。そこまでして手に入れる価値があるルアーというのはまぁ、なかなか無い筈なので、冷静に判断すべきだ。半年もすれば店頭にだぶつく事がほとんどだからである。貴重すぎて使えないようなルアーも困りものである。
しかし、新作レアルアーを手に入れると、とにかく投げてみたくなり、その釣りに行くまでの日々が楽しくなるという効果があるということは、間違いなく言える。