セコイ釣り

  最近、僕の釣りはセコイ。

  なにしろ06年度総釣果の1/5以上をK−1ミノー65に頼っている。はっきり言うが、K−1ミノー65は反則的に釣れるルアーだ。極悪乱獲ルアー。なにせ本来はトラウト用ルアーだからな。05年度までは「小さくてもバスはバスだから」理論に基づいて、釣れたバスはどんなサイズでも1匹と考えデーターに加算していたのだが、10cm以下のバスを平然と釣ってしまうこいつを使い始めてから嫌になって、20cm以下(目測)のバスは計上しない事とした。それくらい釣れる。

  セコイ釣りはいい。なにせ釣れる。釣れなくてもその内釣れる気がする。モチベーションが保ち易く、集中力も湧く。釣りは、何より魚を掛けなきゃ始まらん。釣れない釣り師が何を言ってもそれはいい訳にしか聞こえない。マメだろうがマイクロだろうが、生物学的にバスに分類される魚を掛ければボウズ野郎に対してはそれが勝利なのである。

  しかしセコ釣りは、バス釣りを遊びだと考えた時に致命的な欠点を露呈する。

  飽き易いのである。特に、春から初夏に掛けての爆釣シーズンにはマジで飽きるほど釣れてしまう。世の中、何の苦労も努力も無く手に入れる事が出来た幸せは長続きしないものと相場が決まっている。それはひとえに飽きてしまうからに他ならない。まぁ、それはどうでも良いとして、適当に投げていても楽々釣れる様な釣りをしていると、その内魚を釣る事に感動を覚えなくなる。一匹の魚と出会う感動が無ければ、バス釣りは単に魚のサイズを競うゲームになり果ててしまう。TVゲームとどこが違う?という訳で、バス釣り自体に飽きてしまう原因になり易い。

  バス釣りの楽しさはいろいろなルアーで魚を釣る事が出来るということに尽きる。2インチワームから10インチオーバーのビッグベイトでも釣れてしまう魚などバス以外にいない。多種多様なルアーの使い分けこそバス釣りの神髄というべきで、どこへ行っても同じルアーしか投げないようなアングラーは、バス釣りの楽しさを自ら放棄しているに等しいのではないか。

  セコ釣りに飽きないためのヒントはここにある。簡単だ。セコ釣り「だけ」をやらなければ良い。とは言ってもこれが意外と難しく、ちょっと渋いとなるとついセコ釣りタックルに手が伸びてしまうものである。だから「今日はセコ封印」と決めたなら、タックルごと家に置いてくる位の気概が必要だ。この手の自縄自縛釣行はなかなかサディスティックで面白い。トップ縛り、クランクベイト縛りなどのルールを自分で設定して釣りをすると、かなり燃える。新しいテクニックを思い付いたりして釣りへの新たな刺激になるだろう。

  逆に「今日はセコイデー」と決め、マメだろうがマイクロだろうがとにかく数を釣る事に喜びを見出すのも、それはそれで非常に楽しい。こういう時用に子バッチならなんぼでもというフィールドを知っていると更に楽しめる。ストレス解消にはもってこいだ。ただ、こういう時にありがちなのは釣れすぎるためにバスの扱いが乱雑になる事である。出来ればフックもバーブレスを使い、子バスを無用に傷つけない様にしたい。

  セコ釣りの真価はやはり激渋スーパーハイプレッシャーフィールドでこそ発揮されるべきだろう。こういう場所では釣ったもん勝ちの傾向が更に強くなる。ほとんど全てのアングラーがセコ釣りをしてしているので、極セコな釣りをしていても恥ずかしくないという利点もある。ただしこういうフィールドではバスの方もセコ釣りルアーを大いに見慣れているであろう。なのでセコイだけではなく、ちょっとひねったルアーを使う事が釣果のためには必要だ。

  さて、ここまで書いてしまってからで何だが、一体セコ釣りはどの辺からセコ釣りになるのだろうか?個人的にはトラウトタックルはすべからくバス釣りにおいてはセコタックルだと思う。海のメバル用のワームやジグヘッドは文句無くセコイ。バス釣り用として売っているルアーでも、2インチ以下のワームにはセコイ称号を授与したい。ジグヘッドやテキサスリグよりも、ノーシンカーやダウンショットの方がセコイ気がするのは何故だろう。臭いつきワームからもセコイ香りがする。

  まぁ、状況によっては6インチデスアダーでさえも「セコイ」と言われる事も無いではなく、トップウォーター愛好家の間ではトップ以外は「セコイ」と呼ばれ、POPXなどは立派なトップウォータープラグでありながら「反則」扱いな場合があるらしい。また逆に、真冬などにはメバル用ワームを用いてバスを釣っても英雄扱いである。こうしてみるとセコ釣りであるか否かは状況や本人の認識によって自由自在に異なるようだ。

  バス釣りは基本的に「数よりサイズ」である。セコルアーで一日100匹釣っても、仲間が50UPを仕留めればそっちの方が偉大だ。セコ釣りはどうしてもサイズが出難いという問題がある。更に言えばでかいのを釣ってもばらし易い。しかも、セコルアーでデカバスを釣っても「セコイので釣ってもなぁ」と軽く見られてしまう傾向さえある。

  まぁ、なんだかんだ言っても、一年中セコリグに頼らず釣りが出来るアングラーなどこの世にそうはいない訳である。アングラーなら、ボウズの危機を救ってくれたセコルアーに頬擦りしてしまった経験は一年に何度もあるだろう。なのでセコイ釣りをしているアングラーを笑ってはいけない。というか、せこい僕を笑わないでくれと伏してお願いしたい。

  セコイルアーを投げている横で、強気なルアーを投げ倒しているアングラーにデカバスを釣られるとなかなかにショックだ。往々にしてそういう時に「なら俺も!」強気転換してもまず釣れん。だから、釣り場にはまず強気で登場し、セコリグには釣れなくなったらこっそり登場してもらうくらいにした方が、精神衛生上はいいと思う。




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