ルアー収集の極意

  僕は、ルアー収集が趣味だ、という訳ではない。

  はいそこ!「うそをつくな」と突っ込まない様に!確かに現在、僕のタックルボックスには300個以上のプラグが存在し、なお増加中だが、僕的にはこれはあくまで実釣用の予備であり、コレクションではない。

  しかし、まぁ、美しい塗装が施され、宝石のようにきらきらと輝くプラグを飽きずに眺めてうっとりしている日が無いとは言えないのも事実である。その姿を見れば他人が僕の事を「プラグフェチ」だと誤解してしまうのも無理からぬ話だと言えよう。

  バスプラグは、概ね一個1800円前後で買える。この値段設定はなかなかに絶妙である。

  水の中に投げ込まれ、しばしば根掛かりしてロストしてしまう実用品としては、1800円というのは相当に高価な代物である。しかし、これがコレクションアイテムとなると、1800円というのは手ごろな価格となるのである。女性がコレクションするぬいぐるみ、アクセサリーに置き換えても、1800円はけして高いとは言えまい。ましてや、プラグの場合、1800円で購入出来るのは一流メーカーの製品である。ブランドもののアクセサリーは1800円では買えない。

  そして、ここもまた絶妙なのだが、プラグには多種多様な種類、美しく多様なカラーがある。勿論それはバス釣り的に必要だからラインナップされている訳だが、コレクションアイテムと考えた場合、それらをコンプリートする事が格好の目標になるのである。

  かくて「バスを釣るため」という名目で、アングラーはせっせとプラグを溜め込むことになる。正直に告白すれば、僕が釣りをする際実際に持って行くプラグは、一番多い時でアサイラムに入る45個である。せいぜい予備が100個。それ以上は保存用タックルボックスの中から出る事はない。詰まる所、釣りに行けない時に眺めてにやにやするためだけにそれらのルアーは存在する訳である。

  収集にもいろいろな種類がある。中でも王道であり、一番金も掛かるのが、オールドルアーコレクションである。オークションなどを覗くと30年前のひびが入ったプラグが1万円以上の値段で取り引きされていることがある。物によっては10万円単位で取り引きされる。アメリカでは専門の市場も存在するくらいである。これなどはもはや実釣を目的としない、純粋なコレクションであると言えるであろう。

  純粋なコレクションがあるなら、不純なコレクションがある訳である。もっとも、ここでの不純とはコレクション「だけ」を目的としないコレクションのことだ。

  新製品コレクターという人種がいる。話題の新製品を片っ端から買い集める人々の事である。新製品ルアーは発売当初、まず間違い無く品薄になる。つまり、レアな品物になる訳で、それを他の人に先駆けて所有する事が出来れば人に自慢出来る。コレクションの目的はほとんどの場合同好の士に対して自慢する事だ。その目的のためにせっせと新製品集めに精を出す。このコレクションの特徴は、その製品が品薄でなくなった時点で価値が無くなってしまうというところである。

  新製品コレクションが、釣果とまったく関わらない見栄っ張りコレクションであるとは、単純には言い切れない。ルアーは日夜研究が進められ、日進月歩の勢いで進化している(筈だ)。つまり、新しいルアーは良く釣れる(筈)なのである。実際、画期的な新製品を購入すると、偏向的な釣果を叩き出してくれる事もある。一度そういう経験すると、よさげな新製品はどうしても欲しくなってしまう。

  有名メーカールアーコレクションというものもある。贔屓の有名メーカー、いわゆる「メガ、エバ、デプ、イマ、ラッキー」などのルアーを片っ端から集めることで、この範疇にアメリカルアーコレクターなどがいる。有名メーカーであれば当然流通量も多く、集めるのも簡単かと思えばさにあらず。所詮、ルアーメーカーというのは中小企業であるので、日本全国津々浦々にまで製品を行き渡らせるのは難しいのである。人気メーカーの製品であれば買われてしまって店頭に並んでいない事もある。ましてや全カラーコンプリートとなると、相当熱心に釣具屋を漁っても難しい。

  有名メーカーのルアーは種類が多く、カラーも豊富。それにきちんと考えて作られたものが多く、良く釣れる。コレクションにはうってつけなのである。反面、供給量が需要を上回ってしまうと、苦労して集めたルアーが店頭でだぶついてしまって悲しい思いをしたりする。また、メーカーが新製品を出しまくってしまうと収集が追い付かなくなり、辛い。また、有名メーカーの製品の中にも、ぜんぜん釣れないゴミのようなルアーも、きちんと存在する。

  いずれのコレクションにも言える事だが、ルアーにも流行り廃りがあり、レアだレアだと騒がれ店頭で抱き合わせにされ、オークションでは定価以上の値段で売られていた製品が、ある日を境に一顧だにされなくなるということはざらにある事である。ルアーをコレクションするならその辺は覚悟しておかなければならない。また、これはルアーコレクション独特の傾向だが、話題の新製品と華々しくデビューし、多くの人が血眼になって探したルアーが、使ってみたらさっぱり釣れないとなると、急速に人気を落してしまう事がある。逆に、地味にデビューしたルアーが釣れる釣れると噂になり、あっという間にレア物ルアーの地位に成り上がる事もある。多くの情報を収集すると共にルアーを見る目を養い、将来のレア物ルアーを見極め先行して収集しておくくらいの事が出来るようにしておきたいものである。

  もっとも、外来生物法が施行されて以来、バス釣り界の将来は不透明である。メーカーもバスに特化した新製品をあまり出してくれなくなっている。もしもバスを駆除する画期的な方法でも開発されようものならせっかく集めたバスルアーはただのフィギアとなってしまうであろう。なにせ、バスルアーに食ってくる日本内水面在来魚などは存在しないのだから。

  それだけは勘弁して欲しいものである。




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