ライトリグの芸術。

  ライトリグは釣れる。

  それはもう問答無用に釣れる。誰しも初めて3インチクラスのワームを用いてツネキチやジグヘッド、ノーシンカーをやった際、あまりに釣れるのに感動した経験があるはずだ。かくいう僕も初めてカットテールのノーシンカーをやった時にはその釣れ具合に魅了された。なにしろ他の何を投げるよりも釣れたのである。

  日本ではバス釣りとはツネキチを指すと言っても過言ではない。特にメジャースポットにおいてはライトリグ以外の釣りは異端ですらある。横一列にアングラーが並んで、同じ様に竿をシェイクしている光景は、知らない人が見ればなにか宗教的な儀式のようにも見えるであろう。そこに割り込んでバイブレーションでも投げようものならば、あからさまな異端審問の対象になる。場合によっては寄ってたかって火あぶりにされるかも知れん(ないない)。

  ライトリグは、基本的にはリアクションバイトを狙うハードルアーの釣りよりもむしろ餌釣りに近い「食わせ」の釣りである。バスの食欲に訴えかけるために、如何にもバスが食べ易い様な小さく柔らかいワームを使い、バスの目の前になるべく長くルアーを置いてバスがワームの事を完全に餌であると思い込むまで待つのである。このため、ハードルアーを追おうとしないような低活性のバスやハイプレッシャー下でスプ−クしたバスにも口を使わせ易い。

  この理屈から言って、ワームはバスが食べ易い様に小さければ小さいほど良く、バスが違和感を覚えない様にラインは細ければ細いほど良く、ルアーの移動距離は小さければ小さいほど良い、ということになる。もちろんポイントまでの距離やカバーの度合い、狙うバスの活性やサイズによってこの辺りは調節しなければならないが、ライトリグは基本的に「よりセコく」リグを作ったほうが釣れる。

  世の中にはライトリグしかやらないという人がいる。これは日本のバス釣り事情を考えればやむを得ない部分もある。ハイプレッシャーフィールドではどこもかしこも叩かれ捲くられていて、しかも隣りのアングラーまでの距離は5mなんて事もある。そういう場所でオカッパリオンリーの釣りをし、しかも月に一度しかバス釣りが出来ないのだから、なんとしても魚を見たいというのであれば、どうしてもツネキチに頼らざるを得ないこともある。

  しかしながら、ライトリグにはいろいろな弱点がある。

  まず、釣りが遅いということである。その性質上一投に毎に掛ける時間はハードルアーに比べて歴然と長くなる。狭い野池ならば良い。良さそうな場所を片っ端から撃って行っても1日あれば何とか終わるであろう。しかしこれが大規模リザーバーなどであったらどうか?良さそうな場所のみを選んでいったとしてもとてもではないが時間が足りなくなるはずだ。つまり、ライトリグが本当に威力を発揮するのはピンスポットを完璧に見極められた場合であるということである。そうでないのであればハードルアーで流して行ったほうが余程効率が良い。

  タックルが弱いのも重大な弱点である。カバー際でバスを掛けた場合やバスが大型であった場合はライトリグではどうしても取り込めないという状況が出てくる。足場の悪い場所や高台も同様である。世の中にはこの弱点も弁えず、オカッパリであるにもかかわらず2ポンドなどと言う超細ラインを使っている者もあるが、余程の腕が無ければ絶対に取り込めるものではない。

  キャスタビリティが悪いのも弱点である。リグが軽く、飛ばないので、どうしてもバスと接近戦を戦うことになる。このため、いい加減にポイントに接近してバスを散らしてしまったりスプークさせてしまったりしてしまい易い。忍者のような用心深さでのアプローチは必須となる。

  釣れるバスのサイズが選べないのも弱点に分類して良いであろう。不思議な事にバスが集団でいた場合、ライトリグを使用すると小さなバスから優先的に釣れてしまうものなのである。特にギルが多い池で小さすぎるワームを使うとひたすらにギルばかりが釣れてしまうという悪夢に見舞われる。

  以上のような弱点を踏まえておかないと、ライトリグは唯のセコ釣りに終わる。確かにツネキチを適当に沖に投げ、ひたすらシェイクしていてもバスは釣れる(かもしれない)。しかしそれはバス釣り本来のもつダイナミズムや意外性とはかけ離れた釣りとなる。いっそのこと餌釣りをした方が潔くていい。

逆に言えば弱点を理解し、正しい使い方をすればライトリグは芸術になりうる。世の中には叩かれ尽くしたポイントや低活性の極悪条件下から繊細なアプローチと精密な操作によって鮮やかにバスを引き出すアングラーがいて驚かされるが、あれこそ芸術と言うに相応しい。僕のような大雑把なアングラーから見るとあれはなんだか魔法のようにも映る。

はっきり言って、ライトリグの釣りはハードルアーに比べて遥かに難易度が高い。ハードルアーはポイントへのキャストに成功しさえすれば、釣れるかどうかはルアーとバスの気分任せであるが、ライトリグはそこからバスを誘わなければならないからである。その誘いかたによって歴然と釣果に差が付いてしまう。つまり腕の差が釣果にはっきり現れる釣りなのである。

  「今日はつれねーからツネるべー」というような安易な考えでライトリグを選択するのはとても芸術的とは言えない。そもそもそういう発想しか出来ないアングラーはせいぜい子バッチを釣って坊主逃れをするのが関の山であろう。ライトリグはここぞという場所で取り出す伝家の宝刀であるべきだと思う。

  というわけで、最近ライトリグを修行中 ()




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