もっとも高価な釣り道具

  絶対に必要な釣り道具の中で、最も高価な品はなんであるか。

  ロッド?ノー。

リール?ノー。

バスボート?んー高価ではあるが絶対に必要ではないな、日本では。

  答えは自動車である。まぁ、高校生がチャリンコで釣りに行ったり、免許が無い人が電車に乗って釣りに行ったりする事が無いとは言えないが、本格的にバス釣りをやろうというなら自動車は所有していなければまずいだろう。

  何しろ、バス釣り場はど田舎にある事が多い。細い山道を延々と登って行った先にあるリザーバーや野池に行くにはどうしても自動車がいる。自動車が無ければ電車でも辿り付ける、都会に近いメジャーレイクや公園の池などに行くしかないが、そういう場所は往々にしてハイプレッシャーフィールドであり、有り体に言ってろくなバスが釣れん。

  未知なるフィールドに向けて夜中に起き出し、車にタックルを積み込み、イグニッションをひねる。ハンドルを握ってさぁ行くぞ!と気合を入れる時ほど気分が高揚する瞬間は無い。人の車に便乗して行くと、この高揚感が味わえないのが物足り無いほどである。暗い道を走りながらその日の釣りの予定を考える楽しさ。昇る太陽に心は焦り、自然とアクセルを踏む足に力が入る。

  06年2月現在、僕が乗っている自動車は、実は釣りには超不向きなスポーツクーペである。購入した時は釣りをやっていなかったので、釣りに使う事など想定しなかったのである(ゴルフバックさえ積めれば良かった)。これで無理矢理野池などに行くものだから、オイルパンや排気管は凹むは、カウルはボロボロになるは、いつも汚いは、挙げ句にタンクからガソリンが漏れ出すなど散々である。ゴムボートも満足に積めない。ただ、大遠征時の高速クルーズは流石に早いし楽である。ロッドも7フィートのトマホークが普通に積める。

  キャナピー所有の車がワンボックスの4WDである。二人で釣りに行く時はこれで行く訳だ。こいつが何しろ最強である。荷物は何でも積めるし、タックルを満載した状態でも4人の人が乗れる。当然悪路はものともしない。やはり、本格的に釣りをしようと言うなら本格4WDを手に入れるべきだと思う。

  リーズナブルかつ釣り的に必要な機能を満たしていると思うのが、軽のワンボックスである。これの4WDバージョンは非常に良い。荷室の広さは普通車のワンボックス顔負けだし、悪路走行性能も相当高い。何より本体価格、維持費が安く、燃費も相当良い。軽なら高速料金が安いのもポイントである。

  バス釣りにおいて自動車を使う際にもっとも気を付けなければならないポイントは、残念ながら車上荒らし対策である。

  近年、車上荒らしは本当に多い。バス釣りは車を止める場所からフィールドまで距離がある場合が多く、当然釣りに行ったらなかなか車までは戻らない。デカバスを釣って意気揚々と引き上げてきても、車が荒らされたりしていれば気分はだいなしである。

  一番効果的なのは、車の中に物を残さない事である。外から見て中に何も無い車は車上荒らし犯も狙わない。高価なロッド、リール、タックルボックスは全て持って出るか、外から見えない様に隠しておくべきだろう。カーナビ、カーステレオもカモフラージュしておく事を忘れずに。

  「この車はバスアングラーのものですよ」と宣伝しているような車も良くない。非常に残念な事に、釣り場での車上荒らし犯のほとんどはバスアングラーが化けた奴である。奴等は同じバスアングラーのタックルを狙っているのである。ショップやメーカーのステッカー、リアウインドウから丸見えのロッドホルダーなどは車上荒らしを呼び寄せ易い。なるべくならステッカーは貼らず、ロッドホルダーを付ける場合は窓にカーテンを付けるなどの対策が望ましい。

  当然、セキュリティも有効である。釣り場での車上荒らしは、こんな分類もなんだが、プロは少ない。セキュリティを解除するほどの技術を持っている事が少ないのである。このため、外から見てセキュリティが有りそうだというような車には手を出さない。いわゆるナンチャッテ・セキュリティも結構有効である。

  遠征する時にもっとも困るのが自動車の故障である。パンク、バッテリー上がり、原因不明のエンストなどが旅先で起これば、はっきり言って釣りどころではない。地味だが遠征前にはバッテリーとオイルのチェックくらいはした方が良い。また、旅先で余所見運転をして車をぶつけたり、無茶をやってガソリンタンクに穴をあけたりすると、心情的にも経済的にも心底辛い(経験者は語る)。車は大事に使いましょう。

  もちろん、事故は論外である。いつ、いかなる時にも安全運転に留意するのはドライバーの義務である。スピードの出し過ぎには特に注意しよう。マズメに間に合わないからと言って飛ばし過ぎるなどもっての外だ。遠征の帰り道には居眠りに注意しなければならない。早起き、そして過酷な釣りをこなした後なのだから眠気が襲ってくるのは無理からぬ話である。眠くなったらコンビニの駐車場にでも入って寝てしまうべきだ。我慢して、無理して、挙げ句に事故を起す事ほど馬鹿馬鹿しいことはない。

  アングラーにとって自動車は、移動の道具であり荷物置き場であり、休息場であり作戦会議室である。時には秘密基地であり、心を癒してくれる相棒になってくれたりもする。もしかしたらロッドよりもリールよりもルアーよりも釣果に関わっているかもしれない釣り道具、それが自動車である。

  リールに油を差すのと同じ位には、洗車をしてやっても罰は当たらないと思う。




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