水の色について
単純に水質の問題で言うなら、そりゃ、誰だってクリアでキレイな水の方が好きなのに決まっている。
山間のリザーバー。10mボトムまで見えそうなクリアウォーターに船を浮かべて釣りが出来たなら、それはもう最高の気分であろう。出来れば季節は秋、紅葉が水面に映るようならなお望ましい。しかしながら、バス釣り的な視点で見れば、クリアな水が無条件に大歓迎であるとはいえない。
クリアな水質でのバス釣りは難しい。これは定説である。個人的にもクリアすぎるフィールドではあまり良い思いが出来ていない。クリアな水質で生活しているバスは目が良く、ルアーを見切り易いというもの理由ではあろうが、むしろアングラーの存在を察知され易い事の方が大きな問題ではないかと思う。もっと大きな問題は、バスもルアーも丸見えである為にバスの反応が悪ければそれも丸見えとなり、それを見たアングラーの心が挫けてしまう事であろう。ワームを取り囲むも、食う気配ゼロという感じバリバリのバスを見ると、ワームを操作するのが心の底からあほらしくなってくる。
では逆に、マッディウォーターが楽な釣り場なのかと言えば、これはそうでもない。マッディウォーターでは、バスはストラクチャーに非常にタイトに寄り添う傾向がある。このため、キャストがかなりシビアになる傾向があるのである。視界不良の為バスがルアーを見付け難い為、あまり速い動きをするルアーをバスが追い掛けないという問題もある。このため、意外にハードルアーはマッディウォーターでは炸裂しない。心理的側面として、見えバスが少ない為に釣れない時間が長くなると、そのフィールドにはバスがいないのではないかという根源的かつ深刻な疑念に苛まれ易いのも問題であろう。
個人的には、ステインウォーターのフィールドがもっとも良い実績を残せている。ただしこれは、日本のバスフィールドのほとんどがステインウォーターの水質であるからでもある。ステインの水質と言うのは、キレイな水の中に程よくプランクトンが発生している状態である事が多い。このような状態ではプランクトンを食べる小魚も活性が上がり、勿論それを追うバスの活性も上がっている事が多いのである。関東近辺の野池では透明度(正確ではないが)1〜1.2m程度のステインウォーターの水質が多く、それくらいの水質の方が釣り易い。
バスは、水質によって生活する水深を変えるようである。クリアウォーターではバスはかなり深い深度で生活している。このようなフィールドではアングラーも深い深度にルアーを送り込まなければならない。個人的経験では、4〜5m以深にルアーを送り込むとクリアウォーターでは良く釣れた覚えがある。反対に、マッディウォーターではバスは非常にシャローなエリアに上がっているものである。バスは見えないのに30cmも無いような激シャローで釣れたりする。1.5m以浅のエリアがマッディでは一番釣れる水深だと思う。残るステインだが、困ったことに「これ」という水深は無い様である。これは、ステインに分類されるようなフィールドでも「どちらかと言えばクリア(もしくはマッディ)寄り」という風に幅があり過ぎるからであろう。また、同一のフィールドでも日によって水質は微妙に変っており、ステインウォーターのバスはそれに敏感なのである。一晩越えただけで前の日とバスの居場所がまるで違うというようなフィールドは、むしろステインウォーターのフィールドに多い物である。
バスは基本的には目で餌を捜すのだという。そのわりにはバスルアーは生物とはかけ離れた姿、色、動きをする物が多いのだが、これはバスの原産地であるアメリカ西南部にはマッディウォーターのフィールドが多いからではないだろうか。目で餌を捜す生物のくせに餌が良く見えない水質のフィールドで暮らしているのである。いきおい、動く物には何でも食い付くというような習性になってしまったのであろう。クリアでルアーが丸見えというようなフィールドでは、バスはしっかりルアーが見える為かルアーを見切り易い。このため、見切られ難いトップウォータープラグやソフトルアー、サスペンドミノーが釣れ易い(ただしこれも場合による)。
前述したが、マッディウォーターでバスはシャローのストラクチャーにタイトに張り付いて生活している。このため、基本的にはストラクチャーを厳しく攻められるテキサスリグ、ラバージグなどが釣り易い。クランクベイトをストラクチャーに絡めて釣る釣り、いわゆるカバークランキングもマッディシャローのメゾットである。派手な動きと派手なカラーの如何にもバスルアーというようなルアーが良く釣れる。
ステインウォーターでは…、日が良ければなんでも釣れる(おいおい)。パターンというのが一定しないのが特徴といえば特徴である。ただ、日によっての微妙な水質の変化を見極め、マッディ寄りなのかクリア寄りなのかによって攻め方を変えることが釣果への早道になるだろう。
風が吹くと水が臭うようなどマッディフィールドでもバスは釣れるものだが、正直そんな場所では釣りなどしたくない。そもそも、どマッディのフィールドは生活廃水の流入、無闇に水を塞き止めたことなどによる人為的要因で水が濁っている場合が多いのである。そういう場所で釣りをしていると、人間による自然破壊の現場を眼前に突きつけられたような気分になって気が滅入ったりする。また逆に、クリアウォーターの気持ちが良いフィールドで釣りをしていたら、捨てラインや丸々太った捨てワームを釣ってしまう事もあり、これもまた後ろめたい物である。
それにしても、信じられないほど汚い水の中で平然と生きるバスたちを見ると、その健気さに感動したり、しぶとさに呆れたりもして、人生のいろいろな事を考えさせられたりも、ちょっとする。