メジャーフィールドの恐怖

3月に行なわれた、シールズカップ2006第一戦(詳しくは釣行記を参照)は、茨城県はUIS沼で行なわれた。UIS沼と言えば某Tプロが育ったという、関東屈指のメジャーレイクとして古くから有名である。

  結果は惨澹たるものであった。というか、出場28名中23名がノーフィッシュというのは、ツワモノぞろいのチームSEALSとしてはかつてない程の惨状である。かくいう僕も文句無くノーバイトであった。

  僕は正直、メジャーフィールドと呼ばれる場所でいい釣りをした事が無い。霞、UE沼、裏磐梯など。全国的にも名の知れたバスレイクである筈の場所に行くと、なんと全然魚いないじゃん!という現実に直面するのである。なぜなのだろうか。

  そのフィールドがメジャーになるためには条件が1つだけある。それは、バスが釣れなければならないということである(当たり前だ)。

  バスが釣れる。しかも、かなり釣れる。そういう噂が全国的に広まり、どれどれと遠方からアングラーが駆け付けて来て初めて、そのフィールドはメジャーになる。実際、USI沼でバスが釣れるということは、僕がバス釣りを始める前から有名な話であった。少なくとも10年くらい前まで、USI沼では大いにバスが釣れたらしい。だからこそUSI沼はメジャーフィールドになり得たのである。

  ところが、先日の大沈黙が示す通り、現在のUSI沼はさっぱり釣れないフィールドに変貌している。もちろん釣れる日にはかなり釣れるらしいし、先日も釣った人はちゃんといるので、全くバスがいなくなった訳ではないらしい。しかし、かつてのように簡単に釣れないということは、明らかにバスの数が減ってしまっていることを示している。

  世間一般の人々は、バスは日本在来種を食い荒らす極悪魚であり、天敵がいないために無限に増殖する、と信じているようである。しかしながら、それが過ちである事は特にUIS沼以下、関東の古くからのバスフィールドを見れば明らかだ。

  つまり、バスは移入直後には確かに爆発的な増殖を見せるが、その後環境に適応するとその環境に合った数にまで減少してしまうのである。理由は幾つかある。ベイトフィッシュがバスの生息パターンに慣れ、バスに食われ難いように生活パターンを変えること。バスを餌にする生物の増加(水鳥など)。そして、バスアングラーの増加による駆除効果である。バスはアングラーに釣られると、その事が原因でかなりの確立で死んでしまう。つまり、バスアングラーが多ければ多いほど、バスは淘汰されてしまうのである。

  これらの原因によって、バスの移入後時間の経ったフィールドではバスが減ってしまう。かつてはメジャーフィールドであった場所でバスがあまり釣れないのはほとんどこのためである。ちなみに、バスの原産国アメリカでは当然、同じ様な現象が昔から起こっている。このため、アメリカではろくにバスは釣れないらしい。釣れる場所はバスを放流し、管理している湖なのである。

  バスは、数が減ると回遊傾向が強まるらしい。これは、1匹頭の縄張りの範囲が広がるからであろう。このせいでバスの数が多かった頃は四六時中バスが着いていたようなポイントにバスがいないと言う事態が起こる。また、バス密度が高かった頃はバスが仕方なく暮らしていたような3級4級場所からバスが消えてしまう。バスの数が減ったメジャーフィールドでバスが釣り難いのは無理も無い。その時の状況に応じた超1級場所に、時合いを読み切って入り、適切なルアーをプレゼンテーションしてやらなければ釣れないのだ。

  しかし、逆に言えば簡単でもある。セオリー通りに釣りをすれば釣れるということでもあるからだ。しかし、ここで問題になるのがプレッシャーの問題である。メジャーフィールドがメジャーフィールドたる所以は、アングラーが無茶苦茶多く訪れることなのだから。超1級場所などあっという間に叩かれてしまってぺんぺん草も生えない。誰よりも先にそのポイントに入れれば良し。入れなければ…、はっきり言って釣る方法は考えられん。先日の教訓から考えれば、その時限りの突発的なパターンを見付ける、他の人が知らないようなパターンを見付ける、ということになるのだろう。まぁ、それが本当のバスフィッシングなのだと言えばそれまでだが。

  悲しいかな、釣れなくなったかつてのメジャーフィールドが復活したという話はついぞ聞かない。これは、バスの減少が自然の摂理である事を示している。面白いことに、バスを適当に駆除した場所などでは逆に、何年か後にバスが爆発的に増殖する事があるのだ。自然の摂理に逆らったことによる皮肉な結果だと言えよう。

  アングラーは誰しも古くから有名だったメジャーフィールドに憧れに近い気持ちを持っているものである。そこにはきっと歳月を閲したビッグバスがうようよいるにちがいない、と期待するからなのだが。その期待と現実のギャップに打ちのめされると、どうもメジャーフィールドには苦手意識を持ってしまうのである。

  まぁ、老舗と言うのは料亭でも寿司屋でも最初は敷居が高い物である。何度も通い、常連にならなければ本当に美味い物は食えん。一見さんお断りの場合は紹介してもらわなければ入れない場合さえある。メジャーフィールドも老舗であろう。何度も通うか、そのフィールドを知り尽くした常連にポイントを案内してもらわなければ、美味しい思いが出来ないのも当たり前なのかもしれない。




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