華麗なるビッグベイト

  ビッグベイトなぞタックルボックスの飾りに過ぎない。

  などと言っておると時代に取り残されるぞよ。今やビッグベイトはバスフィッシングの中でも、最もトレンディなカテゴリーとなった。数年前には想像もつかなかったことである。

  そもそも、ラージマウスバスは無謀なお魚である。10cmもあるミノーに25cm程度の子バスが食ってくることはよくある。これを考えると比率からいって50cmのバスなら30cmの巨大ルアーに食いついてきてもおかしくないということになる。

  特に、ベイトフィッシュが豊富なフィールドでは、バスは想像よりも遥かに大きなベイトを追っているものなのである。バスに追われたオイカワがボートに飛び込んできたことがあるが、全長何と25cmだった。あれをあの勢いで食っているならばビッグベイトがけして荒唐無稽なルアーではないことがお分かり頂けるかと思う。

  ただし、ビッグベイトが炸裂するにはどうしても必要な条件がある。

  それは、バスがでかいベイトを食っているということである。バスが日常的にでかい魚を食っていればこそ、マッチ・ザ・ベイトが成立し、バスが違和感無く口を使ってくれるのである。この意味で言って、やはりビッグベイトは大規模リザーバーや天然湖、大河川などで炸裂し易いルアーであると言える。

もちろん、ビッグベイトがプアーな野池で釣れることもある。しかしその場合、釣れ方はほぼ間違い無く単発である。これはこの場合のバイトが、縄張りを荒らすビッグベイトに対する「攻撃」でしかないからである。しかし、往々にしてこの種のバイトをするバスは大型の個体であることが多いので、ビッグバス一発狙いという使い方はありだとは言える。

  ビッグベイトと一口で言ってもその種類は様々である。大きさも30cmオーバーの超ビッグベイトから、20cm前後の小型ビッグベイトまで色々ある。大きさは狙うフィールドのベイトに合わせればいい。ベイトの大きさを調べるためにベイトを捕まえてみるのもいい。バスが意外にでかいベイトを食っていることが分かればビッグベイトを信じ易くなる。

  一般的ビッグベイト(?)であるジョイントのリップ付きタイプは、クランクベイトだと思えば使い易い。立ち木や護岸テトラなどにヒットさせて使うとバイトが誘発させ易い。勿論、フィーディングエリアでのステディリトリーブも効果的である。このタイプはフローティングであることがほとんどなので、要所で浮かせ、放置したり小刻みに動かしたりするという使い方が出来る。この使い方はバスにいまいち元気が無い時に効果的な使い方となる。

  最近はやりのS字系といわれるタイプだが、水がクリアなフィールドで、バスがストラクチャーに強く依存しない場合に効果的である。基本的にはリアクションルアーだと考えるべきで、やや早巻きが釣れ易いようである。

  巨大ノイジー系ビッグベイトは意外なことを言うようだが、場所を選ばずに投げるが吉である。これは、ノイジー系へのバイトが8割以上「怒りのアタック」だからである。バスが我を忘れてアタックしてくるのだからベイトの大きさはあまり関係が無い。ただひたすらに、賑やかでやかましいルアーであればよい。出方は笑えるほど派手である。ただし、極めて場をスレさせ易いという欠点があり、一発勝負だと考えて間違い無い。

  さて、ビッグベイトが炸裂し易い状況という物がある。それは、バスからルアーが見え難い状況である。流れのある場所、濁りとクリアの境目、強風下などではビッグベイトは他のルアーを遥かに上回るストロングパターンになり易い。こういう時は本当に、レギュラーサイズのルアーを投げるよりも遥かに効率良くバスを釣ることが出来る。

  バスがフィーディングモードに入り、ぼこぼこボイルしているのになぜかルアーに食ってこないという時がある。こういう時こそビッグベイト、特にちょっと躊躇してしまうようなドデカベイトの出番である。この場合バスはベイトフィッシュ以外の物が目に入っていない。そのため、バスが追っているベイトフィッシュよりも目立つことが何より最優先なのである。

  ビッグベイトにはどうしても専用タックルがいる。2オンスもあるようなビッグベイトをMクラスのロッドで投げるのは無謀以外の何物でもない。ロッドが折れても文句は言えないし、何よりフッキングパワーが足りない。やはり7フィート前後のH〜XHのロッドが欲しい。ラインはナイロン20LBでもやや頼りないので、25LB以上を使いたいものである。引き抵抗が強い物が多いので、巻き上げ力のある丈夫なリールも欲しい。

  ビッグベイトを使いこなすコツはとにかく投げることである。なんでもいいから投げる。まず投げることに羞恥心や恐怖心を抱かなくなる事が第一歩である。慣れると巨大な着水音さえ頼もしく聞こえるようになる。4インチワームがセコ過ぎると感じるようになったら一人前である。そのうちルアーを買う時に、ビッグベイトの棚から選び始めるようになるだろう。

  ビッグベイトで釣れると「バスってすげぇ!」という驚きと感動の念を覚えずにはいられない。ライトリグでバスを釣り慣れていればいるほどその感嘆は深いと思う。そもそも、同じ魚を釣るのにこれほど多くのルアーを使える魚はバス以外にはいない。時合いを読み、ここぞという所で投入したビッグベイトにバスが応えてくれた時ほど、バス釣りの奥深さに興奮させられることはない。

  ただし、いつでもどこでもビッグベイトを投げ倒しているアングラーがいるが、あれもやはり美しくない。適材適所にルアーを使い分けてこその、エキサイティングバスフィッシングだと思う。




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