カバー攻略の真実

  バスはカバーについている。

  常識である。知らないというバスアングラーは、多分いまい。しかしながら「知っている」と「理解している」の間には、海よりも広い乖離があるものだ。僕はある日の釣行でそれを思い知った。

  その野池は、通い慣れた池だった。春の定番とも言うべき池で、水底にある凹凸の一つまで知り尽くしたと自負していた。

  しかし、その日はなぜか反応が薄かった。時期的にアフターだったこともあり、僕はそれを理由にして、早々にその池を見切ってしまった。今日は駄目だ、と。しかし、そんな僕を尻目に某ホワイトナポレオン氏は諦めなかった。彼はその時、とんでもない決断をする。

「食った!」

  という叫び声に僕が振り向くと…?あれ?ホワイトナポレオンさん、どこやねん?姿が見えないのである。ばしゃばしゃとバスとファイトする音だけがする。目を凝らすと、なんと彼は物凄いブッシュの中に潜り込んでバスと格闘していたのである。

  駆け付けてみれば、そこはキャストどころか身動きすらまま成らないほど枝の入り組んだブッシュであった。その中に潜り込み、ルアーだけを真下に落したのである。枝の隙間から抜けてきたバスはなんと45UP。僕が唖然呆然とした事は言うまでもない。

  カバーの中にバスはいる。もう一度言うがこれは常識である。しかしながら、その時僕は、そんな見るからにバスがいそうなカバーとはいえ、ルアーを通す事もままならなそうなブッシュなど、初めから釣りの対象にはならないと思い込んでいたのである。

  それ以来、そのメソッドは「ジャングリング」と呼ばれて伝説となった訳だが、それまで僕は、バスがいそうなカバーだとはいえ、その中にごそごそと音を立てて侵入するような真似をしたらバスは逃げるだろうとも思っていた。しかし、それがとんでもない誤りである事がこの時、実証されたのであった。

  バスというお魚は、その場所の水深が例え30cmしかなくても、適したカバーさえあればそこにいるのである。それくらいカバーが好きなのだ。しかも、カバーの中にいると安心するのか、相当な事があっても逃げない。そして、気が緩んでもいるのか、実にあっさりとルアーを食ってくる。

  自ずと導き出される結論としては「イージーに魚が釣りたければカバーを撃て!」ということであろう。更に言えば「でかいバスが釣りたければより濃いカバーを撃て!」ということになるであろう。そんなことは知ってる?いやいや、僕がジャングリングを見ちまったような経験をしなければ、これはなかなか実感できない筈である。

  何故かと言えば、ヘビーカバーか絡む場所での釣りは大変だからである。単純にテキサスリグを使う釣りでヘビーカバーを攻める事を考えてみよう

  濃いウィードや葦、こんもりしたブッシュにテキサスリグを落すには、まず重いシンカーを使わなければならない。場合によっては1オンスに迫るシンカーが必要になるだろう。そんなもの、普通は持っていない。シンカーが重くなれは、ロッドもやはりそれに応じたロッドが必要になってくる。それにカバーからバスをぶち抜くには、やはりH以上のかちかちロッドが必要だ。さて、Hフレックスのロッドなどどれだけのアングラーがもっているだろうか?そして滅茶苦茶太いライン。最近は20ポンドのフロロなど滅多に売っていない。

  それにプラスして、壮絶なる根掛かりとの戦いが発生する。普通のカバーならまずは根掛かりなどしない筈のテキサスリグだが、ヘビーカバーではこれが容易に帰還不能状態になる。テキサスリグはリグるのが面倒だ。シンカーもタングステンなどは結構高価である。そんなテキサスリグが、一投でお亡くなりになる可能性があるのがヘビーカバーフィッシングという物なのである。

  これでは、ヘビーカバーを前にアングラーが尻込みしてしまうのはむしろ当然である。ちなみに、タックルが伴わないアングラーが無謀なカバーを攻めているのをたまに見掛けるが、バスが可哀相なのでやってはいけない。

  しかしながら、ヘビーカバーを避けていてはバスは釣れない。特にでかい奴は釣れないのである。超ハイプレッシャーフィールドで、人が5mおきに置物のように並んでいた時に、その間にあったヘビーカバーに無理矢理リグをねじ込んだら、あっさりヒットした事もある。アングラーならヘビーカバー専用タックルを必ず持っているべきだろう。滅多に出番が無いとしても。

  世の中には逆に、ヘビーカバー大好き、という人種がいる。彼らは常軌を逸したようなヘビーカバーにルアーを投げ込む。そこからバスをぶち抜く様は凶悪である。これを見て「おいおい、そこまでやらんでも」と思ってしまう様ではバス釣りというものが分かっていない。バスにとってヘビーカバーは一等地なのだ。濃いカバーであればあるほど、強いバス(つまりでかいバス)が陣取っている物なのである。真にでかいバスを狙いたいならそこまでやってこそ本物なのである。




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