春のバス釣り。

  バス釣りを始めようとしている方がいらっしゃるならアドバイスしたい。

  春から始めなさい。間違っても冬や真夏に始めない様に。

  春。北関東から東北南部に掛けては、4月〜5月初めに訪れる。一般人にとっても厳しい冬が終わったのだからもちろん良い季節なのではあるが、バスアングラーにとっての意味合いはそれどころではない。春はバス釣りの黄金時間なのである。

  バスは、水温が10℃以下になると極端に動きが鈍くなる。バス釣り的冬とはフィールドの水温が10℃を切った時に始まる。逆もまたしかり。日差しが暖かくなり水温が10℃を超えた時がバス釣り的春の到来である。

  ただし、水温が10℃を超えたらいきなりバスが狂い出す訳ではない。水温10℃を超えるくらいからバスはゆっくりと動き出す。風の当たらないカバーの奥の奥や、ディープ、ボトムの凹みなどからそっと這い出してくるのだ。ただし、この季節は三寒四温が当たり前の季節である。油断して冬ごもり場所から遠く離れた場所で水温が急低下しようものならバスの命に関わるわけだ。この為バスはあまり冬ごもり場所からは遠く離れない。余談だが、このバスの習性を鑑み、春先にバスが釣れる場所の近くでバスは冬ごもりしていると覚えておくと、冬に役にたつかも知れん。

  春先動き出すバスは必ずでかい奴が先。という伝説がある。これは全てが本当であるとは言えないが、あながち嘘でもない。特にワカサギがいるような寒冷湖では信じて寒さに震えても損は無い。

  これは、でかいバスほど消費エネルギーが大きく、有り体に言って腹が減り易いことと、でかければでかい程体力があるので寒さに耐えられることが関係している。更に言うと、でかいバスは早いとこ腹を満たさないとスポーニングに間に合わなくなるということがある。冬にガレた分を戻し、産卵に備えて更に体力を回復させなければならないのだ。日本の寒冷湖のメインベイトワカサギは冬から春先にシャローに上がってくる。このワカサギを狙って未だ水温が低めの春先にデカバスがシャローに上がってくる訳である。

  さて、春先が終わり、水温が15℃を超えるといよいよ爆釣の春が到来する。この時期になるとデカバスはスポーニングに備え、それ以外のバスも冬ごもりの空腹を満たすべくシャローに押し寄せ、手当たり次第に飯を食い始めるのだ。

  この時期、ブレイクに隣接したシャローフラットなどで芋グラブでも投げとけば、バスはそれこそ100や200は当たり前、の勢いで釣れる。この時期の素晴らしいところはこんなてきとーな釣りでもでかいのが釣れてしまったりすることである。

  ただし気を付けなければならないのは、ルアーは断然小さい方が良いということである。この時期のバスが狙っているベイトは一様に小さい。そして、あまり動きが激しいものは食い難くて食えない。ワームなら芋グラブ系の一口サイズ。ハードルアーなら小さなサスペンドミノーなどが良い。

  この時期は日和も良く、虫も少なく、葉が茂りきっていないために薮こぎもやり易いので、初心者に強くお勧めである。この時期にバス釣りを始めれば、バスというのはなんとイージーに釣れるお魚であるかと誤解し、バス釣りが楽しく始められること請け合いだ。

  しかし、調子に乗ってはいけない。そんな駆け出しアングラーを戒めてくれるのがスポーニングのバス、いわゆるネストである。

  バスのスポーニングは条件の調ったつがいのバスが、ネストを形成するところから始まる。強い流れや風が当たらず、水質が良く、底質が固く日当たりの良いシャロー(まぁ、そんな絶好の場所はそうあるものではないが)にネストは形成される。そして、産卵。シャケの産卵のようにオスメスが並んで産卵を行なう。そして、メスはいなくなるが、オスは残って卵を守る。

  このスポーニング中のバスは、物凄く神経質になっている。特に最初のオスメス一緒にいる時期などは人の気配を感じるとさっと隠れてしまうほどだ。バスというのは成魚になるとメスの方が必ず大きくなる。当然狙うはメスのバスなのだが、はっきり言ってスポーニング中のメスは手強すぎて素人の手には負えん。

  ネストを守るオスのバスは、常に同じ場所に停位しているし、他の魚を見ると向って行ったりもするので釣れそうに見えるが、これも実は簡単には釣れない。初心者はこの見えバス(当然でかいことが多い)に騙され、捕まり、必死に釣ろうとして余計な時間を費やすものである。この時期は他でなんぼでも釣れるのであるから、ネストのバスは釣れないと見切って他で楽しんだ方が精神衛生上よろしい。

  もちろん、ネストのバスも技があれば釣れる。上手い人になると百発百中で釣ってくる。しかしながら、ネストのバスは子供を守っているわけで、それを釣っちまったら子供はどうなる?という意見も無くはない。釣っても構わないが、可能な限り早くもとの場所にリリースしてあげるべきだろう。ネストのバスをバイブレーションなどで引っ掛けている奴がおるが、そんなのは言語道断である。

  春のバス釣りは楽しい。しかし、この楽しい季節も概ね6〜7月には終わりを告げる。反動で釣れないいわゆるアフターの季節が始まってしまう訳だ。日差しは耐え難いほど強くなり、道を阻む草木は勢いを増し、挙げ句にバスは飯を食い飽きて口を使わない。バス釣り的夏の始まりである。

  この時春のルーズな釣りからビシッと頭を切り替えて、タイトなキャストと繊細な誘い方が必須な夏の釣りにシフトできるかどうかで釣果は変ってくる。してみると本当は春も惚けずに釣りをすればいい訳だが、それはまぁ難しい。

  春に楽しかったがために辛い夏や冬が乗り切れるということも、当然ある。




TOP