SEOアクセス解析

逆転のブザービーター

バイブレーションが苦手だった。

中層を高速で移動するプラグを、果たしてバスが追うものだろうか？僕にはそういう疑問が有ったのである。バスというのは待伏せ捕食を常とするプレデターではないのか？カバーからのこのこ誘い出されて、プラグを追っ駆け回すなどということが有り得るのか？そう思うと、バイブレーションがさっぱり信用出来なくなっていたのである。

信用できなければ投げない。投げなければ釣れない。単純な悪循環により、僕はバイブレーションではほとんど釣った事が無かった。

それがある日の体験を境に変った。それは地元の大き目な野池。春のある日、しかも夕暮れ間近な一時の奇跡だった。

その日、釣れなかった僕は最後の勝負に、というよりは諦め悪く、取水塔の上に立ち、ルアーを適当に投げ始めた。誰にでも同じ様な経験の覚えが有るだろう。そういう時は半ば諦めているので、なんだか普段使わないようなルアーを投げてみたくなるものだ。

という訳で選択したのが、釣った事も無いバイブレーション。ボーンカラーのブザービーターだった。あまり考える事も無く、沖に向ってど遠投。しかも早巻き。釣れる気などさっぱり起きなかった。

ところが、これが不思議な事に連発するのである。一投一匹という言葉があるが、まさにそれだった。しかも、サイズが伸びないこの池にしては珍しく、２５～３５ｃｍくらいのバスが次々とキャッチできたのである。他のバイブレーションに付け替えても釣れたが、何しろブザービーターが凄かった。

実は、この釣果には後付けの理屈がある。実は、キャストしたその一帯は水面下１ｍ位までウィードが生えていたのである。このウィード上端すれすれにバイブレーションを通すのがその時のパターンだった訳だ。

僕は、この時までバイブレーションのことを誤解していたのである。

バイブレーションは、何も無いエリアに投げてもまず釣れない。当たり前だ。バスは基本的にカバーに着く魚なのである。しかし、これまた当たり前だが、バイブレーションはプラグ類の中でも一二を争うほど根掛かりし易い。ヘビーカバーを直に攻めたのではルアーが幾つあっても足りなくなる。

ここから導き出される結論は、バイブレーションは根掛かりし難いカバー向けのルアーだという事になる。

そこにバイブレーションの特徴を加味してみればよい。バイブレーションの最大の武器は遠投性能であろう。そして、他のあらゆるプラグにも増して早巻きする事が出来る。つまり、非常に広範囲に広がるプアなカバーに点在するバスに対してスピーディにアピール出来るルアーだと言う事が出来るだろう。

この事に気が付いて、僕にとってバイブレーションは手放せないルアーとなった。日本のフィールドはカバーがプアなフィールドが多い。護岸野池などではどこにバスが着いているのか分からないような場面も少なくない。そのような場面ではバイブレーションを使いこなせるかどうかで釣果が変ってくると言っても過言ではないのだ。

特にブザービーターである。ブザービーターの最大の特徴は、バイブレーションとは思えない、大振りなウォブリングアクションだ。バイブレーションは、実はクランクベイトやスピナーベイトよりも、水押しが少ない分アピールが小さい。しかし、ブザービーターの水押しはクランクベイト並みなのである。それでいて、バイブレーションの武器である大遠投性能と早巻き性能は持っている。つまり、クランクベイト並みの大アピールを持つバイブレーションということになる。

実際、バスにリアクションバイトさせる能力が、他のバイブレーションに比べて非常に高いと思う。他のバイブレーションで駄目な場面でもこのルアーだけは炸裂した事が良くある。特に、比較的ゆっくり巻かなければならない場面で炸裂する事が多いのは、ゆっくり巻いても確実にアクションするからであろう。護岸野池で遠投して、ボトムノックさせつつ引いてくると言うパターンでグッドサイズが入れ食いになったこともある。

しかし、ここであえて言うが、僕はバイブレーションはブザービーターで決まり！とは思っていない。ブザービーターがさっぱりだった場面で他のバイブレーションが連発したこともよくあるからだ。これは、アクションの質とラトルサウンドの違いによるものであろう。バイブレーションは他のルアーに比べ、バスがセンシティブになり易いと思う。アクションとラトル以外にも、スピード、レンジ、カラーなどによってバスの反応が見違えるほど違ってくるのがバイブレーションというルアーなのである。

バイブレーションは、ハードルアーの典型だといわれる。つまり、一投で一匹を確実に釣るのではなく、百投してルアーに反応する一匹を釣るルアーなのだ。この時、そのバイブレーションを信用できるか否かで釣果が違ってくる事は間違い無い。僕はブザービーターを信頼している。信じて投げ倒せるバイブレーションは時に強力な武器となるのだ。

その名の通り時間切れ間際の逆転シュートを決めてくれた事は数知れず、５０UPを筆頭に４０UPは何本揚げたか数え切れないほどだ。サーチベイトとしてだけではなく、ピンポイント爆撃でもデカバスを絞り出せる、希有なバイブレーションだと言えよう。お値段がお高いだけに無くすとショックだが、その威力を知ってしまったら、その値段に文句も付けられない。