ゴムボート最強論

  いまや、チームSEALSでは、ゴムボート同盟は風前の灯火である。フローターではなくゴムボートを持っているだけで皆が驚愕していたかつての日々からすれば隔世の感があるなぁ。

  バスボート、と言えば日本ではFRP樹脂製ボディを持つ、14〜21Fくらいのエンジン付きボートを指す。だが、バス釣りに命を捧げているようなアングラーでもなければ、普通は持っていない。浮かべられるところも非常に限られる。維持費は天文学的に高く、そもそも本体も信じられないほど高い。日本で安く作れよ!と言いたい。

  一般人から見れば、アルミボートも立派なバスボートである。アルミボートという呼び方はバスボートオーナーからの蔑称と言うべきだろう。バス釣りにしか使えないのは同じなのだから。ジョンと呼ばれる小型のものから、バスボートに匹敵するような巨大アルミ艇まで種類は豊富。今ではエレキと2馬力エンジンなら免許も不要。価格もサラリーマンなら清水の舞台一回分と言った感じである。およそ、俺はバス釣りが大好きである!と大きな声で言いたければ、この銀色のお船は持っていた方が良い。

  さて、この下に我らがゴムボートが来る。

  ゴムボート。はっきり言って上記2種類に比べて、弱点が多いのは確かである。まず、何よりも素材がゴムだ。いや、正確には最近の高級艇はゴムではなくどちらかと言えばビニールで出来ているのだが、素材の高級さから言ってFRPやアルミに劣るのは間違い無い。値段などどうでも良いが、障害物に衝突する、底を打つ、ルアーがぶつかるといった場面で、素材の強度が劣ることは時に致命的な欠点となる。当然寿命も劣る。

  構造的な欠点として、船全体が浮力体であるために喫水部分が少なく、風に流され易いということが挙げられる。ゴムボートを買った人が最初に気に入らなくなるのはこの部分だろう。時に漕ぐスピードよりも遥かに速いスピードで流されるのだから無理も無い。

  チューブ部分が大きく、有効スペースが意外に狭くなるのも欠点である。11Fクラスの大型ゴムボートの有効スペースは、8Fアルミとほぼ同じだと思えば良い。要するに大きさの割りに荷物が載らず、狭いのである。また、意外に船体は重い。5シーターゴムボート(2.5人乗り)ともなれば、アルミとあまり変らないと思った方が良い。分解収納できるのは利点だが、準備はそれなりに大変である。

  フットコンエレキがノーマル状態では装備できないのも困ったことである。アンカーを下ろしてその場に停泊した状態で行なうような釣りと違い、やはりバス釣りは(特に巻き物の釣りは)両手がフリーの状態で操船出来なければどうしようもない。

  つまり、ゴムボートはあまりバス釣り向きではないのである。まぁ、ぶっちゃけ置く場所と費用に目処が立つなら、素直にアルミボートを購入すべきだとは思う。

  しかし、あえて僕はゴムボートにこだわっている。理由は、まぁ、単純に言えば僕の車に乗らないからなのだが、無論理由はそれだけではない。ゴムボートがある面でアルミを大きく上回っていると信じるからである。

  まず、船としての信頼性の問題である。アルミは、鉄ほどではないが比重が重い。簡単に言えば素材そのままであると水に浮かない。要するに船の形をしていなければ水には浮かんのである。このため、アルミ艇は小さな船であればあるほど浮力が小さい。つまり安定性と復元性に問題を抱えることになるのである。しかし、我らがゴムボートは、浮力が非常に高い。というか、艇全体が浮力体だと言っても良いくらいだ。しかも、重心が著しく低い。このため、小さな小さなボートでも驚くほど安定しているのである。あなたが波の高いフィールドでの使用を考えているならば、ジョンを買うくらいならゴムボートを選んだ方が良い。

  次にやはり収納性の問題が来る。4シーターゴムボート(二人用)はセダンのトランクスペースに楽勝で入る。2シーターゴムボート(一人用)なら部屋の片隅に置いておいても目立たない。アルミならそうはいかない。装備品諸々を含めたらジョンボートでさえ車一台分のスペースを必要とするだろう。

  改造すればフットコンも使える。大型のものならエンジンだってOKだ。同クラスのエンジンを装備した場合、速度や安定感はアルミ艇を上回る。

  これも重要な点だが、値段はアルミ艇などに比べて破格に安い。高級ロッドとどちらが高いか?という世界である。エンジンの付けられる最高級ゴムボートでも、同クラスのアルミ艇に比べれば格安である。つまり、使い捨てが効くのだ。

  そして、何より僕がゴムボートにこだわる理由。それは、ゲリラ的な使い方が出来るという点につきる。

  その気があれば、ゴムボートはとこででも浮ける。歩いて駐車場から1時間というような場所や、4畳半しかない野池でだって浮ける。垂直の崖をへずって降りなければならないリザーバーででも、その気になれば浮ける。もちろん、大型ゴムボートでは難しいが、これだって分解すればアルミではとても進入できないような場所に運んで膨らませることが出来る。ゴムボートは分解が可能なのだ。エンジン、エレキ禁止のフィールドにだって手漕ぎであれば浮ける。

  個人的には、2シータークラスの一人用ゴムボートこそ日本では最強のゴムボートだと思う。これにエレキを装備すれば完璧だ。アルミオーナーが指を咥えて見ているしかないような水域で浮くことこそゴムボートオーナーの本懐である。もっとも、エレキ装備は重いので、ゲリラ的な使い方をするならば手漕ぎの方が現実的ではある。ただそれだとライバルはフローターになってしまうのだが。

  ゴムボート使用上の注意点を簡単に言えば「無理をしてはいかん」と言うことに尽きる(おまえが言うなと言う意見は却下)。ゴムボートは非常に安定した乗り物であるが、それは艇が艇の形を成していてこそのものである。パンクしてしまえばそれはもうひどいことになる。とにかくパンクにだけは注意した方が良い。荷物を持ち込み過ぎるのも良くない。ゴムボートは意外に狭い。無闇に荷物を増やすと面倒が見切れなくなって、何時の間にかチューブにプライヤーが刺さっていた、ロッドがいなくなっていたなどと言うことの原因にもなりかねない(経験者は語る)。ゴムボートは確かに強風高波には大きさ以上の強さを誇るが、もちろん限界はある。特に大場所での出船は、天候を十分考慮検討してからにしたほうがいい。

  日本のフィールド事情はそもそもボート釣りに対して非常に厳しい。リザーバーでは基本的にエンジンが使えず、場所によってはエレキさえ使えないこともある。この場合、フローターかゴムボートを使うことになる訳だが、フローターはタックルの持込みや移動速度の点でどうしても大場所向きではない。やはりゴムボートこそ日本のフィールドにマッチしたバスボートであると言えるのではないだろうか。

  まぁ、もっとも、バス釣り的にはイメージと格好も重要な要素ではある。ゴムボよりもアルミの方がカッコイイじゃないかという意見には、反論の余地がない。




TOP