ゴミの憂鬱

  はっきり言えばゴミが落ちているのは何も釣り場だけではない。道端にも山の中にもゴミは落ちている。車から煙草の吸い殻を放り投げる。山の中に粗大ゴミを置き去りにする。畑の中に空缶をけっぱぐる。これほどまでに日本人のモラルが低下したのは戦後の学校教育が道徳教育をおざなりにしていたからであり、同時に核家族化によって家庭内での道徳教師役であった祖父母が同居しなくなったことにより子供に基本的なしつけが為されなくなったことに原因が求められるのではないかと思うが、別にそれはここではどうでも良いことである。

  とにかく釣り場のゴミである。釣り場のゴミのほとんど全てはアングラーが出したゴミである。特にバス釣りにおけるメインフィールドと言うべき野池は人里離れた場所にあることが多く、これはもう良い訳がきかないくらいその責任がアングラーに求められる。

  釣り場のゴミはアングラーの恥である。

  プラグのパッケージ、ワームの袋、捨てラインなど釣りに関わるゴミは無論のこと、昼飯に食ったコンビニ弁当の器、ペットボトル、煙草の吸い殻などアングラーがやむを得ず出してしまうゴミは意外に多い。これを全て釣り場に投げ捨てれば程なく釣り場がゴミで埋め尽くされるのは当然のことである。

  基本は出したゴミをすべて持ち帰ることであるが、それ以前にプラグ、ワームはパッケージから出してタックルボックスに入れた状態で持ち運べばゴミは出ない訳である。昼飯も嵩張る器ゴミが出る弁当ではなくせいぜいビニール包装ゴミが出る程度のおにぎりやサンドイッチを選択すれば、ゴミはポケットに収まる程度となる。煙草を我慢すれば吸い殻は出ない。ようするにゴミを出す以前にゴミを減らす努力をすべきなのである。

  さて、ゴミ問題には困った側面がある。釣り、特にルアーフィッシングをやる場合、必ず「ゴミを投げ捨てる」場面が出てきてしまう。

  そう、根掛かりもしくは吹っ飛んで行ったルアーのことである。ゴミのことを語る時、いまいちアングラーが強気になれないのはこの問題があるからである。これはもう必要悪であるとしか言えないのだが、アングラーの努力次第でいくらかは減らすことが可能である。まず、太いラインを使用すること。ボートアングラーならともかく、オカッパリアングラーは根掛かりしてもその場所に近づけないのであるから、たかだか捨て枝程度で切れてしまうようなラインを使ってはならない。ワームはしっかりフックにセットする。ワッキー掛けの場合特に吹っ飛んでしまい易いので、出来れば熱伸縮チューブを使用したい。生分解ワームなどのエコタックルを使用するのももちろん良い。

  よく、根掛かりしてラインを切る場合、手元から切ってしまうアングラーを目にするが、あれは駄目である。長く残ったラインが他のアングラーのルアーに絡まり二次災害的根掛かりを引き起こすばかりでなく、水鳥などに絡まったりもする。必ず引っ張ってルアーの結び目から切るようにしたい。その場合は素手ではなく袖口やペンチなどに絡めて引っ張るようにした方が良い。ルアーが飛んできた時に目などに刺さらない様に背中を向けて引っ張るのも忘れずに。

  さて、僕は自分が聖人君子だとは思わないし、誰しもが見本にすべきアングラーであるとも言わない。なぜなら僕はほとんどゴミ拾いをしないからである。捨てラインや比較的きれいなゴミくらいは拾っているが、こ汚いゴミを専用の袋を準備して拾ってくるようなことはしない(ここまでやるとなると、既に釣りのついでの領域を超えてしまう)。なので、皆さんにゴミ拾いを強要する訳にはいかない。ただ、例えば弁当に買ったコンビニ食品の袋を持ち帰る時に、ゴミの1つ2つをついでに放り込んでくるくらいのことをしても罰は当たらないと思う。

  ゴミ問題は自分一人では解決不能なので書いていて憂鬱になってくるし、同じアングラーを疑うのも悲しいことでもある。ただ、ゴミ問題が原因で釣り禁止になってしまったフィールドが幾つかある事を思えば、自分がゴミの投げ捨てなどしないからといってゴミ問題を他人事としてしまうことは、アングラーとして許されないことではないかと思う。




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