フロッグの男気

  僕はフロッグが大好きである。ただし、生涯獲得匹数はたったの1匹だが(06年3月現在)。

  いや、一応10回以上食わせたことはあるのだ。だが、乗らない。やった事がある人なら分かると思うが、あの釣りは食わせるよりも乗せることの方が遥かに困難なのである。

  はっきり言って、フロッグと言うルアーは今や時代遅れのルアーだと言えるように思う。なにせ、フロッグと同じ釣りはワームでも出来る。ワームでやった方が遥かに乗りも良い。今は良いワームがたくさんあり、フロッグの売り物であるウィードレス性能においてフロッグを上回るようなワームも無い訳ではない。

  しかし、フロッグには熱狂的愛好者が多い。フロッグ好きなアングラーは、浮き藻やリリパットを見付けると心が奮い立つ。雷魚が掛ってもいいように雷魚ロッドと80LBのPEラインを装備してフロッグを投げ倒すバスアングラーもいる。フロッグの乗っている葉の下をイメージし、バスとの間合いを考えながらジリ、ジリっとフロッグを操作し、狙った場所でバスのバイトを誘発させる。正にルアーフィッシングの醍醐味がたっぷり詰まったルアーそれがフロッグなのである。なにぃ?ワームでだって同じ釣りが出来るじゃん?そうやって苦労して食わせたバスが全然乗せられない。そこが何とも言えんのですよ。

  僕が唯一釣り上げたカエル好きのバスは確か30cmそこそこ。とあるくそ暑い日の一日。仲間数人と野池巡りをしていた時のことであった。

  暑かったが、季節的には初夏という感じのころである。初夏と言えばアフター。アフターと言えば?巻き物を追ってこないばてばてバス。

  ということで、その日1日。仲間内で僕だけがさっぱりハチベイ。04年だが、その年僕はハードルアーだけでこの年の釣りを貫徹しようと決意しており、意地になってワームを投げなかったのである。

  最後のその野池に辿り着くまでに既にへろへろ。着いてみると、何とその野池は葦と浮き藻に覆われて、巻き物などどこにも投げ込めるエリアが無い状態。まぢですか?

  これはもうだめか?僕は観念し、なにか無いかとタックルボックスの中を覗き込むと、なぜ持ってきたのか分からないがそこに、キッカーフロッグダティがコロンと転がっていたのである。

  そういやぁ、こんなもんも持っていたなぁ。ふと見ると、対岸であるアングラーがフロッグを投げているのが見えた。浮き藻の上にぶん投げて、首を振らせつ葉っぱの上をジリジリと動かす。ほほう、そうやって使うのか此奴は。コバンザメ釣法発動。

  どれやってみよう。幸い、僕のその時のロッドはラグゼカマー574。ラインもナイロン20LB。そう簡単にカバーに巻かれるようなタックルではない。

  ぶん投げて、ドッグウォークの要領で首を振らせ、少しずつ巻いてくると…。

  突如!浮き藻が炸裂しルアーが引き摺り込まれたのである。

  なんだこりゃー!夢中でフッキングし、とにかく巻いてバスをぶち抜いた。それはその日初めてのバスにして、その日唯一のバス。そして、フロッグで釣り上げた最初のバスとなったのである。今でも鮮明に思い出せる、大きさでは計れない思い出の一匹となった。この一匹で僕はフロッグが大好きになったのである。

  実はこの日、後2回フロッグを食わせることには成功したのだが、乗せられなかったのである。フロッグの楽しさと共に、難儀なルアーであることもこの時知った。この日以来、フロッグに向いたポイントさえあれば勇んで投げているのだが、結局フッキングには至っていない。

  正直言って、フロッグの乗りが悪いのは、その用途において雷魚を釣ることが想定されているからであろう。フックの軸が太すぎるのである。信じられないような極悪フッキングをせねばバスの口を貫通させられない。また、フックの付き方からして、バスがルアー全体を完全に口の中に入れなければフッキング出来ない様になってもいる。

  北関東には、あまり雷魚はいない。バス専用のフックの軸が細いフロッグが欲しいところではある。しかし、あのぶっといフックこそがフロッグというルアーの男らしさと気合の象徴であるという気もする。トレーラーフックなど以ての外だ。他のルアーでは到底撃てないカバーに突入し、どのルアーにも比較にならないような凶悪なフッキングで、バスをぶち抜く。まさに男気満点、浪花節的な釣り。それがフロッグゲームである。

  もっとも、フロッグに向いた浮き藻などあまり生えているところが無い。密集し過ぎていてもバスが食えないし、バラバラすぎてもバスが着いていない。蓮も、春はいいが夏場には葉っぱが反り返っていてうまく引くことが出来ない。葦の隙間、オーバーハング下などでも使えるが、フッキングは浮き藻で使うよりも更に難しくなる。

  不器用なルアーである。それがまた男らしいではないか。滅多に使うことが無くても、男ならフロッグをタックルボックスに忍ばせておくべきであろう。

  フロッグを使って50UPをカバーの中からぶち抜くことが、僕の密かな夢なのである。




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