フックについて

  フックなんてついていればいいのだ。

  と思っている人も、フックが悪かったがために50UPをばらしたりすればその瞬間から考えを変えるはずである。刺さりが悪くなったり、伸び加減だったりしたフックは確実にバラシの原因になる。いまいましいことに、でかいバスになるほどフックが原因でのばらしは多くなる。でかいバスほど口の中が固く出来ているものなのである。

  現在日本で市販されているフックはまず完璧な鋭さを持っている。かつてのアメリカ製ルアーのように買ってきたら必ずフックを研がなければならないようなルアーは、現在は無いと言ってもいい。このため、新品状態のフックはまず心配しないでも大丈夫である。ただし、希にだが針先が曲がっていたり、折れていたりするフックも無くはない。また、スピナーベイトなどには新品状態ではフックカバーが付いていたりするので気を付けた方がいい。

  問題はフックがへたってきてからの話である。フックはバスを大体20匹ほど掛けた頃に針先がやや丸くなる。ちなみに完璧な鋭さを持ったフックというのは、針先で爪を軽く擦ると薄く傷が付くくらいのものである。20匹くらい釣ったフックは爪を擦っても傷が付かなくなる。ただし、この程度ならば100匹釣って100匹掛かったものが90匹になるくらいで、おおかたの人は気にしないくらいのレベルである。問題なのは、バスを掛ける以前にストラクチャーにフックが刺さったり擦れたりした場合である。この場合下手をすると研いだくらいでは回復不能なほど針先が鈍くなっている場合が有る。カバーに絡めた釣りをした場合には一投毎に針先をチェックしたほうがいい。

  一回でも伸びたフックは要交換である。そういうフックは子バスならばいいが、ちょっといいサイズのバスならば容易に伸ばす。下手をすれば折れる。完璧にフッキングした筈のバスにフックを伸ばされてばらすことほど凹むことはそうあるものではない。面倒でも交換しておいたほうが身のためである。

  フックシャープナーは一応持っていた方が良いが、研がなければならないほど針先が鈍くなってしまったようなフックはきれいに研いでもすぐにまた鈍くなってしまうものである。効率を考えると交換してしまった方が楽である。ただ、釣り場で応急処置的に研ぐ場面があるのであればあった方が良い。

  プラグのフック交換はなかなかに悩ましい問題である。よくある失敗として、交換用のフックを買ってきたら大きさが合わないということがある。目分量で選ばず、必ず元のフックをもって行くことにしよう。ただし、むき出しのフックをポケットに入れて持ち運ぶと手に刺さってひどい目に合うので止めたほうがいい。同じ大きさのフックでも軸の太さの違いによって重さに違いが出るものがあり、これはプラグのアクションに関わってくるので侮れない。サスペンドのプラグがシンキングになってしまう場合も有るので、単に丈夫そうだからといって太軸に代えたりしてはいけないのである。一番問題なのはショートシャンクのフックを専用に使っているプラグの場合で、この場合はフックサイズをワンサイズ落してやるしかない。

  ちなみに、スプリットリングからフックを外すのはなかなか面倒である。特に某メ社のスプリットリングは何故だか異常に頑丈に出来ており、プライヤーを使ってこじ開けるのも難しいくらいである(そのわりにフックはやわいのがついているが)。外すのに手間取っているとリングが変形してしまうこともあり得るので、市販の専用プライヤーを購入するのも手である。

  「フックなんか」と馬鹿にする人のタックルボックスを覗くと、プラグというプラグのフックが真っ赤に錆びていやがることがある。これは論外である。錆びたフックは見栄えが悪くなるだけではなく、針先に錆が回ると容易に折れ、再起不能となる。錆びたフックでバスを掛けると傷口が化膿し易いという話もある。錆がひどくなったフックは必ず交換するようにしよう。そもそも、釣行から帰ったらプラグボックスの蓋を開け放して一晩置いておくだけでも錆はかなり押さえられる。ちょっとした錆なら爪で擦るだけでも落ちる。これくらいの手間を惜しんでは真のアングラーにはなれん。

  高比重ワームを使ったフックは当然だが激錆易い。錆というのは感染するものであるので、適当に入れておいたら針箱の中のフックというフックが真っ赤っかになってしまったという苦い経験がある。これを防ぐ方法としては使用済みのフックを分けて保存する他、しまう前に真水で洗うことが有効である。僕はフックをちょっと舐めてからしまっている。

  バスのことを考えるならばバーブレスフックは大変に有効である。本来ならば市販のプラグ全てのフックがこれでもいいくらいだと思う。しかしながら、バスには困ったことにあの大口を開きながらジャンプするという習性がある。あれをやられるとバーブレスフックは容易に外されてしまう。流石にデカバスをばらした時の立ち直れないほどの大ショックとバスの傷を天秤に掛けると、身勝手ながら自らのトラウマを減らす方に傾かざるを得ない。

  世の中にはバスをばらしたらそのフックは交換してしまうというほど徹底している人も居る。少なくとも釣行前には持って行くプラグの全てのフックを点検するくらいの心構えが欲しいものである。フックが原因でのばらしは予防できるのであるから、その幻の一匹が夢の60UPであることを想定すれば、気を使って使い過ぎるということはけしてないのである。ただし、フックを研ぐ時は明るい部屋でやるようにしよう。暗い部屋でしゃりしゃりフックを研いでいるとなんだかこわいので。




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