永遠のグリフォンゼロ

  最初にグリゼロ、困った時もグリゼロ。ここぞという時にも、やっぱりグリゼロ。

  そんな感じで使っていたら、05年から使い出したスクープキラーの釣果は150匹近くになった。このぼろぼろなスクープキラーを、僕は敬意を込めて「ゼロ様」と呼ぶ。もしロストしたら、3日くらいは喪に服すかも知れん。

  最初に手に入れた時の顛末は他のコラム(「メガバス有りませんか」)に書いたので省くが、僕がこのルアーの存在を知ったのは、バス釣りを再開してすぐの頃。とある雑誌記事上であった。

  そこには伊東シャチョーの実釣記事と共に、グリフォンゼロの実物大外観写真と内部構造解説が掲載されていたのである。

  なんでも、随分釣れるルアーであるらしい。それを見ていた僕は、ふと「これ、作れないのかな?」などと、今考えると不遜な事を考えた訳である。これが、僕がルアーを作り出した切っ掛けであった。故に当初作り始めたルアーはどれもグリゼロサイズの表層クランクだった。これが、まずまず釣れる。僕は「グリフォンゼロ恐るに足らず!」などという根拠の無い自信を抱いていた。

  しかして、グリフォンゼロを手に入れ、最初に泳がせた瞬間「これは敵わない!」と思った。その動きは、僕が表層系クランクベイトに出させたいと考えていた動きそのものだったからだ。僕が自作ルアーを作らなくなったのはこのためである。理想のルアーがあるのだから、わざわざ自分で手間掛けて作る必要が無くなったのだ。

  グリフォンゼロの最大の特徴、それば大振りなのにピッチの細かいウォブリングアクションである。表層系クランクは数あれど、この点でグリゼロに敵うモデルは存在しない。このアクションが破格の攪拌力を生み、小さなボディに信じられない様なハイアピールを与えている。

  スモールシルエット・ハイアピール。これがグリゼロの釣獲能力の正体である。

これに加えて、グリゼロはサブサーフェースレンジを細かくレンジコントロール出来るという強みがある。このため、単純な表層系クランクとは違い、本来はシャロークランクが狙うべきレンジも攻略出来るのである。

  僕がこのプラグを良く使うようになったのは、ある野池での出来事が切っ掛けだった。

  その時初めて訪れたその池は、いわゆる総護岸の大きな池だった。かなり沖に至るまでボトムにも変化が無い、非常に釣り難い池だったのである。僕はそこでミノーなどを投げてみたもののさっぱり反応を得る事が出来ない。釣れない池という評判だった事も有り、僕は半ば諦めかけていた。

  ところが、そんな中、なんだか連発していた中学生がいたのである。僕は唖然とし、何を使っているのか見せてもらった。彼が使っていたのが、そう、グリフォンゼロだったのである。僕はそれからその池に通い込み、彼のやり方を参考に、グリゼロの使い方を研究してみた。

  このルアーは表層をただ巻きするだけでも十分釣れるが、それだけでは実力を十分に発揮する事が出来ないルアーでもある。

バスというのは基本的に上を見て生活している魚である。故に、サブサーフェースレンジを泳ぐルアーは良く釣れる。しかしこの表層近くというのが曲者で、バスは意外に10cmくらいのレンジの違いに、敏感に反応するのだ。特にこのルアーのように、ただ巻き系のルアーは正しいレンジを選んでやるだけでバスの反応が見違えるほど違ってくるものである。グリゼロはロッドの角度によって容易にレンジを変える事が出来る。その日の活性に応じたレンジを探り当てられるかどうかが釣果の鍵だ。

  そして、グリゼロはスローにリトリーブしても良く動いてくれる。他の表層系ルアーに比べてゆっくり引くべきだと思う。リトリーブスピードに微妙に変化を付けるのも良い。

  グリフォンゼロを投入すべき場所は、圧倒的に岸際である。しかも、バンクした護岸が良い。この護岸際を、その日釣れるレンジに合わせて引く。ウィードの上を通すのも良く、葦際も悪くない。池の水深は2m以内の場所が良く、マズメ時、夜釣りに強い。季節は春から晩夏までというのが使い込んだ上での結論だ。

  かつてはかなりの入手困難ルアーだったグリフォンゼロである。カラーを選んで買うなどという事は出来なかった。故に、買える時に買っていろいろなカラーを試したのだが、なぜか白系のカラーにバイトが集中した。トップ、サブサーフェースルアーは光が透けるカラーが良いらしい。05年、とにかく無敵を誇ったのがスクープキラーである。

  06年にはやや寂しい釣果に終わったグリゼロだが、これは、グリゼロを投入すべき時にベビーグリフォンゼロを投入したからである。ベビゼロはアクションといいレンジコントロール性能といい、本質的にグリゼロと同じルアーだと思う。ただ小さいだけだ。グリゼロのコンセプトである「スモールシルエット・ハイアピール」をより一層推し進めたルアーだと言えるのではないか。個人的にはアピールの大小で使い分けていこうと思っている。

  夕方、ボウズの危機が訪れた時に、奇跡を信じて最後に結ぶのはいつもグリフォンゼロだ。真っ暗になってから何度も奇跡を起し、僕を危機から救ってくれた。小さいなりして破壊力抜群な僕の守護神。その姿がタックルボックスから消える事は永遠に無いであろう。




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