DEEP-X伝説

  僕がバス釣りを続ける限り、メガバス社のDEEP-X100、200がタックルボックスの中から消えることは無い。

  というより僕の釣りは、DEEP-Xの存在が核になっている。つまり無いと釣りが成り立たないのだ。一度、DEEP-Xを全てロストしてしまってモチベーションが下がってしまった経験から、今では必ず釣り場には予備を持ち込むことにしている。

  何の衒いも無く「我が最愛なるバスプラグ」と声を大にして宣言することが出来るほど溺愛しているDEEP-Xであるが、始めからそんなに信用していた訳ではない。特に200は、最初に動かした時にはその良さが分からなかった。アクションがかなりタイトで、これではアピールが足らんのではないかと不安になったのだ。

  しかし、最初に使った時に爆釣し(「初めてのメガバス」参照)それ以来信頼出来るようになった。だが、ここで逆に僕は、なんでこのプラグがそんなに釣れるのかと疑問に思った訳である。僕がプラグをいろいろ買い集め、比較研究するようになったのはそれが切っ掛けであった。特にディープクランクはいろいろ買い集め、比較研究した結果、一つの確信を得るに至ったのである。

  DEEP-Xだけは違う、と。

  なにがそんなに凄いのか。一言で言えば、魚を釣るために思い切り良くクランクベイトに不可欠な、ある性能を捨てているという凄さである。

  捨てられたある性能、それは、根掛かり回避能力である。DEEP-Xは根掛かりし易いのだ。これは低い浮力と、水平気味の泳ぎ姿勢、リップタッチ時に挙動が不安定になるという特徴がそうさせているのである。根掛かり易いルアーなど、クランクベイトとして失格であろう。DEEP-Xは、クランクベイトとしてみると、なんと欠点だらけのルアーとさえ言えるのだ。

  しかしこの欠点は、裏を返せばそのままDEEP-Xの釣獲能力に繋がってくるのである。

  即ち、低い浮力はスローなリトリーブを可能にし、水平気味の泳ぎ姿勢はバスから見た時のシルエットの小ささに繋がり、リップタッチ時のフラタリングはバスをリアクションバイトさせる確立の高さに繋がるのである。クランクベイトとしての完成度を上げることよりも、そこにいるバスを釣るために必要な機能を優先させたルアー、それがDEEP-Xなのだ。

  特に、リップタッチ時のフラタリングアクションは、DEEP-Xでなければ釣れないバスがいると思わされる程の素晴らしさだ。カバーにボディサイドを擦り付けるように、一瞬反転する。このカバー至近でのフラッシングの威力は本当に凄い。そこにいるバスを確実に釣る事が出来る。

  DEEP-X200は一度大きくモデルチェンジをし、X200(T)になっている。旧型と新型ではどちらが良いのかと言えば、これは断然新型の方が良い。遠投性能と急速潜行性能が上がっているからである。ちなみに、X200(T)の最大潜行水深は、ナイロン20LBを使用した時で大体3m前後である。X100は2mくらいであろう。

  DEEP-Xを使用する上での注意点は「根掛かり易いクランクベイトである」ということを常に頭に入れておくべきだということだ。間違っても混み合った倒木や立ち木に絡めてはいけない。DEEP-Xが真の実力を発揮できるのはプアなカバーなのである。護岸、零れテトラなどのマンメイドストラクチャーが定番だ。日本のフィールドはヘビーカバーが少ない。DEEP-Xは非常に日本向きのプラグであると言えるのである。

  根掛かり易いのであるから、繊細なリーリングが必要であることは言うまでもない。特にカバーにリップタッチした際にはリップとカバーの位置関係をイメージしながら、ハンドルの一回転にも気を配ってリーリングすべきだ。なにしろDEEP-Xはコンクリート護岸にもあっさり根掛かりすることがあるのだ。このため、本来は高弾性カーボンロッドとフロロカーボンラインに向いていると言えよう。

  プアカバーで使うのであるから、単純なゴリゴリ巻きでは効果が薄い。リーリングスピードに変化を加える、ストップアンドゴー、トゥイッチなどを交えた方が効果が高い。特に砂底エリアでのストップアンドゴーは実績がある。

  向いた水質は圧倒的にクリア系。マッディエリアで使うにはややアピール力が足りない。個人的に溺愛しているカラーは、スターダストシャッドである。

  もはや信仰に近い程の信頼を寄せているDEEP-Xシリーズであるが、唯一不満があるとすれば、潜行深度が「DEEP」というにはやや浅いということだろう。6mレンジに到達する金属リップモデルでも出てくれれば完璧なのだが。所有個数はすでに50個近いので一生使い切ることはないと思うが、愛情を注いでいるだけに一個ロストすると七転八倒するほどの悲しみを覚えてしまう。

  05年、06年と初40UPを獲得したのを始めとして、数々の伝説は既にコラムや釣行記で紹介済みである。実際、ここ数年で僕がもっとも40UPを獲得しているプラグはDEEP-X200なのだ。日本ででかいバスを釣りたいのであれば、一つといわず三つくらいタックルボックスに忍ばせておいた方がいいと思う。




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