ブラックバス擁護論3

 ついに、特定外来種にラージマウスバス、スモールマウスバスが指定されてしまった・・・。
 無念であるし、残念である。
 僕はそもそも、ラージマウスバスの指定の是非以前に、この法律自体に重大な欠陥があると考えている。
 僕は外来種のこれ以上の流入に危機感をもっている。その意味で言って、むしろこの法律に賛成しても良いと思っているほどである。しかしながら、これほど欠陥の多い法律に対して賛意を表する事は、僕がバス釣り愛好家にしてバス擁護論者である事を差し引いても、到底出来ることではない
 最大の問題点は、この法律が施行された後も指定種以外の外来種は輸入し放題であると言う事である。呆れ返る事に、例えばかつて見つかってお騒ぎになったアリゲーターガー、チョウザメなどの輸入にはまったく制限が無い。飼育も、移動もOKである。水面管理者の許可さえあれば、放流さえも問題無しなのである。また、極論すればフロリダバス、スポッテッドバスはラージともスモールとも違う種類であるのだから、これも今まで通りと読み取れなくも無い。ちなみに、最新の研究ではフロリダとスポッテッドはラージの亜種などではないらしく、まったく別の種類だと言う。
 そもそもこの法律で真っ先に定めるべきだったのは、これ以上の外来種の国内持込み禁止である。それが、経済上の理由やら何やらで、指定種以外はお咎め無しという事になった。法律の趣旨から言えば逆に、全ての外来生物の輸入を原則禁止し、例外として輸入許可生物を指定すべきだったのである。
 もちろん、そんなことをすれば大変な事になる。指定生物リストは膨大な数になってしまうだろう。それだけに日本に多くの種類の外来生物が既に移入しており、しかも国民生活に欠かせないものになっている事を意味している。それならば既に日本に入ってしまった生物は除外すれば良さそうなものだが、それではやはり法律の趣旨と違ってきてしまう。
 帰結する所が今回の指定生物リストである。これがもう何だか分からない。何しろ基準が曖昧なのである。環境に対する影響を最優先に選定するのであれば、選定種がこれほど少ないはずはない。固有種を迫害しているという意味ではアメリカザリガニ、ウシガエルなどは筆頭であるはずだが指定されていない。この先拡散が懸念される上海蟹なども指定されなかった。これらは環境への影響度よりも経済性(駆除における費用効率を含む)の方が高いためだと思われる。ならば、当然我らがラージマウスバスも1千億円市場を支える魚として堂々外されるべきだが、これは環境への影響度が大きすぎるとして指定されている。選定基準は公開されていない。
 ミシシッピーアカガメと聞くと何の事か分からないが、これがなんとミドリガメの事なのである。縁日などで良く売られているこの可愛らしいカメ。これは今回指定されなかった。「輸入量が多すぎるし、指定すると家庭で飼われていたものが捨てられる危険がある」からだという。
 おかしな話である。輸入量が多いものほど定着し易く環境への影響が大きいのではないか?大体、我々はミドリガメと言うとあの手のひらサイズの物を思い浮かべるが、実はカメ類は生きている限りは成長し続けるものなのである。しかもとんでもなく長命である。そのため、甲羅の直径1mなどと言うミドリガメも存在するのである。実際、大きくなり過ぎて飼い切れなくなり捨てられるミドリガメは後を絶たない。そして、飼えば分かるが彼らは獰猛である。伝染病を媒介する可能性も指摘されている。一時はブラックバスと並んで外来生物問題の看板に掲げられた事もあるミドリガメ。何度も言うが今回は指定されなかった。おかしな話ではないか。
 この法律が、在来環境保護の言い訳のために制定された事はもはや明白である。仮に指定36種全てが日本からいなくなったとしてそれがなんだと言うのか?日本に定着していると言われる外来生物は現在約2000種。しかも更に増え続けているのである。焼石に水と言うも愚かな比率である。しかも、例えば魚類で言えばチャンネルキャットフィッシュは未だ全国規模で拡散しているとは言えない魚種である。つまり、指定の基準が全国的な拡散、定着ではないことは明らかである(しかもキャットは死魚食いで、在来種のナマズとは食性が違うので競合しない)。
 では、指定された36種はなにか?これはもうスケープゴートであると言うしかない。他の1964種から世間の目を逸らさせるための。言ってみれば国は、この36種以外の外来種の輸入にお墨付きを与えた事になるからである。この法令を根拠に外来種の更なる流入を誘う可能性すらある。指定されなければ輸入も移動も制限を受けないのである。なんと無力な法律である事か。
 新たなる移入に制限を与えないのに、定着して久しいラージマウスバスを指定するというのは誰が考えても変である。ラージマウスバスが在来環境に影響を与えているか否かという問題以前に、法律の趣旨が一貫していない。在来環境を取り戻すと言うなら全ての外来生物を指定すべきだし、経済上の問題でそれも難しいと言うならば当然ラージマウスバスは指定されるべきではないのである。それを指定基準を定めず原則無しに指定種を決めるから訳の分からない事になるのである。
 環境庁には指定基準の選定と公開をお願いしたい。そして基準に基づいて指定種を再検討して頂きたい。



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