ブラックバス擁護論

 ブラックバス(ノーザンラージマウスバス、スモールマウスバス、フロリダバス、ノーザンスポッテッドバス等日本国内に根付いているバス類)は現在、日本国内では害魚扱いである。害魚という言葉の定義は非常に曖昧だが、僕はその魚類が害魚と定義されるには下記2つの条件の、どちらかを満たす必要が有ると思う。
 1、 その魚類がいるために、ある水域において生態系のバランスが致命的に崩れてしまう場合。この場合その魚類 は「その水域における」生態的害魚と呼べる。
 2、 その魚類がいるためにその水域を利用している人間に多大な経済的損失が生ずる場合。この場合、その魚類は「その水域における」経済的害魚と呼べる。
 他にもあるかもしれないが、代表的にはこの2つであろう。では、果たしてブラックバスは、この2つの条件に当てはまるのであろうか?
 検証してみようまず1である。ブラックバスを生態的害魚であると認定するにはブラックバスが移入したがためにその水域において生態系が致命的なダメージを負ってしまった事を証明しなければならない。具体的にはその水域においてバスの移入のためにある種族が絶滅したか、絶滅の危機を迎えている(繁殖が不可能なほど個体数が減少すれば、その種族は絶滅の危険があると認定できる)。もしくは、逆に水草や昆虫などの異常発生が、バスがそれらを餌にする生物を捕食して減らしてしまったために起きたのだという事、などを証明しなければならない。
 この場合、バスの捕食によって在来生物が絶滅しない程度に減少する事は問題にはならない。なぜならばバスがフィッシュイーターであることは事実であり、バスが移入することによって捕食分の生物が減少する事は当然であるからだ。当然、バスの移入が合法的なものである事が前提だが、移入時にその程度の事は予測されてしかるべきであり、単にバスの魚食性をもってバスを生態的害魚扱いする事は誤りであると言わなければならない(現状の各報道はこの過ちを犯している)。フィッシュイーターはバスだけではない。ナマズ、ウグイ、コイ、雷魚などもフィッシュイーターであり、渡り鳥なども魚類を大量に捕食する。単なるブラックバスの魚食性を問題にするならば、これらの魚食性生物をも問題にせねばならない。
 また、生態系の危機がバスのためだけではなく、護岸工事や水質悪化、乱獲やその他の生物による捕食も含めた複合的な要因によるものであった場合、やはりバスは害魚とは認定できない。バスを駆除する事によって生態系が回復し得るとは保証できないからである。この場合敢えてバスを害魚と認定して駆除を行うのならば、平行してその他の対策も行わなければならない。残念ながらバスの駆除を行っている水域でその様な環境の根本的回復を同時に行っている所は極少数である。
 これらの定義を当てはめようとすると、バスを害魚と認定する事は非常に困難になる。まず前提条件として、バスの移入以前にその水域において在来生物の生態系が安定していた事を証明しなければならない。少なくとも10年以上はその水域において詳しい生態調査が行われ、在来生物の数や種類が把握されていなければまずこの条件は成り立たない。更に、バスの移入後も継続的に調査が行われ、その他の環境にはまったく変化が無かった場合にのみ、バスと生態系の危機との因果関係が証明される事になる。残念ながらこのような条件を満たす調査結果は僕の知る限り存在しない。であれば、1の条件を当てはめてバスを害魚扱いする事は誤りであると言わなければならない(ただし、将来的にきちんとした調査が行われ、害魚性が立証される事はあるかもしれない。無論その逆も考えられるが)。
 2も同様である。例えばある水域においてバスの移入によって漁獲資源が減ったと証明するには、やはりその水域における生態調査が長期に渡って行われており、対象生物の数が安定して増加していた事を証明しなければならない。そして、バスの移入以後環境及び漁獲方法に変化が無く、バスが移入しなければどれくらいの漁獲増が望めたかを証明しなければならないのである。そこからその損失益を具体的な数字として算出し、バスが移入した事によって生ずる経済的メリットを損益が上回ると証明された時にのみ(ここが重要)、バスは経済的害魚として認定される事になる。こちらの方は例えば代表的な琵琶湖の場合、水質の悪化や護岸工事による漁獲減の予測がまったく行われず、単に漁獲高の推移でバスの害魚性を語る傾向が見られ、更に漁業関係者の損益のみを問題にし、バスが琵琶湖に移入した事による釣り具、ボート屋等の釣り産業の振興や釣り客が地元に落として行く食事費、ガソリン代、それに伴う税収入等の利益との対比が行われていない。このため、琵琶湖の事例ではバスを経済的害魚と認定する事は出来ないと考えられる。余談だがこの経済的害魚性の立証と駆除における税金の投入には密接な関わりがあるはずである。つまり、琵琶湖の場合は滋賀県であるが、バスの経済的害魚性によって滋賀県民が著しく損害を被っている場合、駆除によってその損益が取り戻せると判断された時にのみ、駆除事業に税金から補助金を出す事が許されるのである。単に漁業関係者が損害を被っているというだけなら(前述の様にこれもあやしいが)、漁業関係者がかってに駆除を行えば良い訳で、それに税金から補助金を出すいわれはない。
 しかも言えば、以上の2条件が証明されたとしても、それは「その水域における」バスの害魚性」が立証されたに過ぎないのである。これを当てはめて即ち全国規模でバスを駆除する事など出来よう筈も無い。全国規模でバスを害魚と認定するには、全国規模で前述した調査と証明を継続的に行わなければならない。昨今の環境破壊の進行を考えればそれが御伽噺にも似た不可能事である事は言うまでもなく理解できるであろう。
 以上にように、実はブラックバスは害魚であるとは、簡単には証明出来ないのである。しかるに現状のように報道各社は証拠も無くバスを害魚扱いし、一般市民に対してバスは悪者であるというイメージを植え付けようとしている。これは悪質なプロパガンタ行為であると言って良く、偏向報道も甚だしい。バスを悪者扱いするのなら前述二点を立証する事が最低限求められると、僕は考える。



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