バス釣りと鼻歌。

  さわやかな日差し。涼やかな風。煌く水面。

  そんな気持ちの良い場所で楽しいバス釣りを楽しんでいると、自然と良い気分となり、無意識に口が動いてしまう。特に、一人切りで釣りをしていると、周りの目が無い事もあってかなり大きな声が出てしまう事もある。

鼻歌を歌っているアングラーはよく見掛ける。何か声がするな、と思ってその方向を見てみると、歌っているアングラーと目が合ってしまう事がある。その逆もあって、これはなかなかに恥ずかしい。

  鼻歌が釣果に関わる、などと言ったら笑われるかもしれない。しかしながら、個人的には、これがまったく因果関係が無いとは思えない節がある。

  最初に言っておくと、僕は最近流行の歌はさっぱり知らない。CDなどこの5年ばかり買ってもいない。学生の頃にちょろっと流行歌を聞いた事があるくらいで、音楽にはまったく拘りが無い。

  なので、気が付くと歌っている事が多いのは、昔好きだった歌手の曲である。あとは更に昔のアニメソング。しかし、不思議な事にこういう歌が口をついて出る時は、良い釣果に恵まれた事が無い。これは多分、歌を思い出しながら歌っているからであろう。要するに気が散っているのである。ただし、こういう時は気分は良く、釣れない事があまり苦にならない。

  良い釣りが出来た時歌っているのは、いわゆる童謡が多い。「赤とんぼ」とか「カエルの歌」とかだ。しかも、無意識に幾つかの童謡を混ぜて歌っていたりする。しかし、これが不思議と良い釣りに繋がる。心が童心に返っているからだろうか?釣れない時にこのジンクスを思い出し、無理矢理童謡を歌おうとしてもどうしても思い出せなくて歌えなかったりもする。

  ちょっと小耳に挟んだ最近(昔)の流行歌を口ずさんでいる時もある。この場合は、ワンフレーズくらいしか覚えていないので、その部分を延々とリフレインする事に成る訳だ。しかも、往々にして歌詞が間違っている。これも忘我の境地にあるからか、良い釣りな場合があるようだ。

  鼻歌のリズムとリールのハンドルを巻くスピードには密接な関わりがあると思う。アップテンポな曲を歌っている時は早く、ゆったりしたテンポの曲を巻いている時には遅くなる。これを利用して、もっとゆっくりリーリングしたいと考えた時には、更にスローな曲をわざと歌ってみるという手がある。また、ペンシルベイトをドッグウォークさせる際に、リズムの良い曲にのせてロッドを動かすのもいい。

  メジャーフィールドで、周りに多くのアングラーがおり、鼻歌を歌うのは多少みっともないと思うような時は、口笛を吹く事が多い。これも大きく唇を突き出すとなんだか目立つ気がするので、歯の隙間からピューピューとやる。すると自分で吹いておいてなんだが、何の曲を奏でているのか皆目分からなくなる。他の人には変な鳥が鳴いている?と思われているかも知れん。また、そんな時に突然バイトがあると、泡をくって「ぴゅるる!」などと口笛で驚いてしまったりする。

  一人でボートを出して、誰もいない湖上のど真ん中に浮いている時は、かなり大きな声で歌をがなっていることもある。これは実は、一人で浮いているとちょっと心細いので自分を励ますという目的もあるのである。ただし、未だ真っ暗な内に出船した時にこれをやると、他のアングラーが「幽霊の声を聞いた!」と誤解して怪談のネタになるかもしれないので注意した方が良いだろう。

  一人で釣りをしていて、一番まずいのが独り言をぶつぶつ呟いてしまう時である。釣れなくてコトコト煮詰まってしまったアングラーに良く見られるが、これは他人が見るとかなり引くらしい。本人は気が付いていないのだが。ただし、某アツ坊氏のように、ぶつぶつ呟き出すといきなりシックスセンスが発動してデカバスを釣っちまうというアングラーもいない訳ではない。これの類で、のべつ幕なし同行のアングラーに話し掛け続ける者もあるが、これはそれが本人のコンセントレーションを維持する方法なのであろう。

  釣り場で幽霊のようにボーっと沈黙しつつ立ち尽くしているアングラーは、まず釣れてはいない。また、釣り場で緊張のあまり歯を食いしばっているようなアングラーも、見るからに未熟である。やはり鼻歌の一つも口ずさめる余裕は欲しい。

  ただし、酔っ払ってへろへろになりなった挙げ句、大声でど演歌をがなったり、狭い野池で大騒ぎしてヘラ師に怒られたりするようでは、もちろん論外である。




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