バスの種類について

  日本では普通、ブラックバスといえばラージマウスバスの事を指す。

  大正時代に、実業家の赤星 鉄馬氏(余談だが、この人の末弟の六郎氏は、ゴルフの第一回日本オープンのチャンピオンである)が輸入し、芦ノ湖に放流された事はあまりにも有名である。太平洋を船旅で揺られ、箱根の山を人足が担ぎ上げるという過酷な旅に耐えた80匹のラージマウスバスたち。彼らこそ日本のブラックバスの祖である。

  その後、80年代に池原ダムにジム・バグリー氏によってフロリダラージマウスバスの放流が為され、野尻湖にスモールマウスバスが放流されている。

  現在、日本にはラージマウスバス、フロリダラージマウスバス、ノーザンスポッテッドバス、スモールマウスバスの四種が生息しているといわれる。この他にもいわゆるハイブリッドバスは当然生息しているだろう。

  アメリカ大陸には北から南まであわせて6種5亜種ものバスが生息していると言われる。ただし、この内かなりの種類が絶滅の危機に瀕している。アメリカでもバス釣りの対象魚となるバスはラージ、フロリダ、スモールが主であるから、これらは保護、放流されても他のバスはおざなりになっているのだろう。放流事業で逆に生息域が圧迫されている事も考えられる。

  日本にいるバス四種の内、ラージとフロリダラージはほとんど同じ種類である。一般的にはフロリダはラージの亜種だとみなされており、平気でラージとの混血を行なう。今や琵琶湖のバスのほとんどはフロリダとのハイブリットであるらしい。フロリダはその名の通り原産地はアメリカはフロリダ半島周辺である。ラージよりもかなり大型化する事から釣り人の人気が高く、現在ではアメリカ大陸全域に放流が進んでいる。この結果、ラージとフロリダの混血が進み、ある州で釣れるバスのサイズがそれ以前の2倍になったそうである。ちなみに、ラージとフロリダを外観で見分ける事はほとんど不可能だ。側線上の鱗の枚数を数えるしかないが、そんな事が簡単に出来る訳も無い。ただし、琵琶湖にフロリダが広まったのは80年代以降であるらしく、日本のバスはどうもほとんどが琵琶湖由来のバスらしいので、80年代以降にバスが広まった地域のバスはフロリダかハイブリットである可能性がある。

  フロリダラージマウスバスは生態的にもラージマウスバスとほとんど変らない。ただ、ラージよりもややディープに生息する傾向があるらしい。このため、スポーニング期にシャローに上がってきた時以外はほとんど釣れないのだという。

  日本のバスの内、最も耳慣れないバスがノーザンスポッテッドバスであろう。このバスは習性的にはラージとスモールの中間に位置する。外観はほとんどラージと変らないが、背鰭が前後に完全に分離していないこと、舌に歯(ざらざらした部分)があることで見分けられる。ラージよりはやや小型ながら、泳力が強く、流れのある場所を好む。小せえのにやけに引きやがるバスだなと思ったら、そいつはもしかしたらスポッテッドバスかもしれない。

  最近日本でも大人気なのがスモールマウスバスである。ルアーに積極的な反応を示す事から、アメリカでも物凄く人気が高い。その名の通り口は小さいが、非常に攻撃的な性格と貪欲な食性を有している。強い流れと冷水に耐えるため、日本の河川にはむしろラージよりも向いているといわれる。

  個人的感想で言えば、ラージとスモールはまったく別のお魚だと考えた方が良い様だ。生息するポイントや効果的なルアーがまったく違うからだ。ラージマウスバスはハードボトムを「好む」程度であり、泥底や砂底の場所にも平気で生息しているが、スモールはハードボトムに「しか」いないくらい、固い底質が大好きである。A川などではボトムが岩盤のエリアに集中して生息しているようだ。ルアーも、派手な動きをするクランクなどにはあまり反応しない。とにかくミノーやワームのナチュラルドリフトなど大人しいルアーへの反応が際立つ。

  裏磐梯あたりではラージとスモールが混生している。H湖ではどちらかと言えばスモールの方が優勢であるらしい。これはかつてH湖では5〜7月辺りに水位の大幅な増減があり、ラージが繁殖し難い環境であったからである。スモールはスポーニング期間がやや長く影響を受け難かったのだ。近年、水位の増減を行なう期間がずれたこともあり、ラージも増え始めているらしい。ちなみに、ラージとスモールには生物的な優劣は特に無い。生息域の違いは大抵の場合、環境の向き不向きによる。A川でも上流域はスモールが優勢だが、下流では圧倒的にラージが優勢なのである。

  今ではすっかり日本に馴染んだブラックバス達である。今や日本内水面でもっともメジャーなお魚になったと言う事が出来よう。ただし、そもそもブラックバスは大型肉食魚であり、その生息には多量な餌を要する。このため、今後は次第に減少して行くことが考えられるのだ。ある調査によれば、生態系が安定した水域では、バスは生物総量の1〜2%に落ち着くのだという。それが自然の摂理という奴であるが、そんなことになったらバスは容易に釣れなくなると考えられ、下手糞な僕に釣れるかどうか不安になったりもする。




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