バスは何を食べているか

 バスは一般的には主に魚を食うと思われている。
 しかしながら、これは必ずしも正しいとは言えない(もちろん、魚も食う事が事実であることは論を待たないが)。なぜなら、どう考えても他の魚など生息していない水溜まりにもバスは繁殖しているからである。
 では、いったいバスは何を食べているのだろうか。
バスは動くものにならとりあえず何にでも食いついてみる習性を持っている(正確にはちょっと違うが)。だからルアーなんかで釣れる訳である。よく木の葉に食いつくバスが散見されるのもそのせいである。彼らはルアーや木の葉をある特定の生物と誤認して食いついている訳ではない。単に動いているものに反射的に食いついているに過ぎない。
 これは、バスにとって極めて危険なことであることは、ルアーにフッキングしてしまう可能性を取り沙汰すまでも無く理解できるであろう。厳しい自然環境の中、このような思慮の浅い捕食行動をとってきたバスたちがここまで生き残ってこられたのは不思議な気さえする。しかし、実際は逆なのである。
 彼らは、動いているもののほとんどは食べることが出来ると考えているのである。つまり、魚はおろか、両生類、爬虫類、昆虫、節足動物、場合によっては鳥類、哺乳類までもが彼らの捕食対象となる。
 えらく節操が無いが、これは彼らが生息してきた環境が、如何に厳しいものであったかを物語っている。つまり、餌をより好みしていては生きていかれなかったのである。これは、自然に生きるプレデターは皆そうなのである。餌の捕食に失敗し続けて飢え死にしてしまったライオンの話を聞けば、たとえその水域の生態ピラミッドの頂点に位置するバスといえど、厳しい食料環境に生きていることが理解できるのである。
 そのため、バスは捕食し易い生物からとりあえず食べる習性がある。バスにとって最も捕食が容易な生物は昆虫である。次が節足動物。両生類、爬虫類、足の速い魚類はかなり捕食が困難なはずである。このため、バスの生息する水域にいわゆるベイトフィッシュが多数共存していることは珍しくない。バスを放流し続けている河口湖にベイトフィッシュがいないなどということが無いことでそれが分かる。
 このため、バス釣りにおいて主に魚をイミテートしているミノーよりも虫を主にイミテートしたスモールトップウォーター(フライなど)の方が釣果が高いのは当然といえば当然なのである。
 しかしながら、これが大型の個体となると様相が違ってくる。
大型の個体は動きも俊敏で、十分に体力もある。このため、ベイトフィッシュをある程度追い掛け回して捕食することが出来る。
 エネルギー比率の問題もある。大型の個体の必要エネルギーを満たすのに昆虫ではエネルギーが少なすぎるのである(特に活性が高い夏場はそうである)。このため、バスは大型化するに従って捕食対象を魚類にシフトする傾向がある。しかしながら、このために大型のバスは捕食の機会が激減することになる。そのため、いわゆるカバーに辛抱強く潜んでエネルギーの消耗を押さえ、ベイトフィッシュが通り掛かった時に一気に飛びかかって捕食するという、いわゆる待ち伏せの傾向が強くなる。この事がビッグバスが簡単には釣れない原因になっている。
 さて、最後にバスの共食いについて見てみよう。バスはいとも簡単に共食いをする(自分が生んだ奴にも容赦無いらしい(笑))。このため。バスしかいない水溜まりでは落下昆虫はともかくとして、メインベイトはバスであるというとんでもない状況が生ずることになる。
 皆さんは、子バスはいくらでも釣れるのに、でかいバスは影も見えないという状況に遭遇したことがおありだろう。これは、子バスが群れで生活しているからである。子バスにとって、捕食のために群れを形成する必要はまったく無い。ではなぜ群れを成して生活しているのかといえば、外敵から身を守るためである。その外敵とはなんと大型のバスなのである。その証拠に、大型のバスが近づいてきたら子バスが蜘蛛の子散らすように逃げてしまったというシーンは頻繁に見たことがある。
 いくらでもバスがいたようなフィールドでいつのまにかバスがへってしまったというような事例があるが、あれは共食いで子バスが食われたことが原因の場合があるらしいのである(笑)。
このように、バスの食糧事情は非常に厳しい。だから、バスがルアーに食いついてきたならば「ぬか喜びさせて悪かったね」と謝罪の言葉の一つも掛けてやって欲しい(笑)。

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