雨のバス釣り

  雨の日のバス釣りは、辛い。

  雨合羽というのはなぜあのように不完全なのであろうか?ガサガサ動き難いし、蒸れて暑いし、挙句に水が染みやがる。そんな雨合羽を着て水辺に下りると、足元はぬかるんで滑り、草をかき分けると水が撥ねて顔にかかり、カエルはゲロゲロ鳴いている。タックルはびしょ濡れになり、ルアーのフックは錆び、挙句に風邪を引く。雨の日に釣りなどしても良いことは一つも無い。

  しかし、なぜかアングラーは雨の日にも嬉々として水辺に向かう。あたかも前世がカエルででもあったかのように。なぜ、良いことなど一つも無いと言った雨の日に辛い思いまでして釣りに行くのか?理由は簡単、雨の日は釣れるからである。

  低気圧が接近すると魚は浮き袋が軽くなって自由に泳ぎ回れるようになり、活性が上がるという話があるが、正直それはよく分からない。ただ、どんより曇った日に爆釣した経験が多いことは確かである。これ以外にも雨の日にはインレットの水量が増え、水が動くのでベイトも活発に動き、バスも活性化するというのはあると思う。空気中の湿度が上がると羽虫が高く飛べなくなり、水面に落下し易くなる。それを狙ってベイトが水面を目指し、バスも浮いてくるという光景は頻繁に目にする。これ以外にも、夏場などは雨が降ることによって水温が下がり、活性が上がるという要素もある。

  これに加え、雨の日にはやはりアングラーの数が減り、プレッシャーが下がるという要素も見逃せない。昨今バスが釣れなくなっている最大の理由は、アングラーズプレッシャーの増大である。ハイプレッシャーフィールドになればなるほど、雨の日にはバスが釣り易くなる。雨が降ると水面が波立ち、バスからアングラーが確認し難くなるというのも雨の日のバスが比較的容易に口を使う理由の一つであろう。

  これだけ釣れる理由が揃っているのに釣り場に出かけないのではアングラーの資格無しと見なされても仕方が無い。降ってくるのが雨だろうが霰だろうが、たとえ槍だろうがバスが釣れるならば釣り場に向かうのがアングラーの正しい姿ではないか。

  雨の日の釣りで気を付けなければならないことは、まずやはり服装である。たまにウィンドブレーカー程度の装備で雨に打たれている人がいるが、やはり人間身体が濡れると疲れ易くなるし集中力も途切れ易くなる。雨合羽の上下とつばの長い帽子は必需品である。出来れば首にはタオルを巻いておいた方が色々便利である。ただ、有名メーカー市販の2万も3万もする高級レインウェアはどうかと思う。ボートのみのアングラーなら購入の価値はあると思うが、薮こぎが必須のオカッパリアングラーには必要無いと思う。薮こぎの最中よく引っ掛けて破いてしまうからである。ただ、あまりに安物の合羽は蒸れて辛いので、多少高めでも通気性素材のものを購入した方が良い。あと、必ず着替えと身体を拭くタオルは持って行った方が良い。後述するが、雨の日には落水の危険性も高いからである。

  雨の日は遠心ブレーキのリールは使わない方が良い。ブレーキ室に水が入ると突然ブレーキが利かなくなるからである。コルクグリップのロッドは雨の日は手が滑る。EVAのものがベストである。ラインが水を含んでしまい、通常時よりもルアーが飛ばなくなるので、やや長めのロッドを使いたい。もっとも、その様な雨用タックルをわざわざ準備したことはないが。

  雨の日は特にトップ系のルアーが有効である。ややうるさ目のノイジー系が炸裂し易い。ポイント的には圧倒的に岸際が良い。特に護岸回りが草狩り場となる。インレットも良いが、流入してくる水の質によって当たりはずれがあるポイントでもある。通常クリアなインレットが雨によって濁った場合はかなり期待出来る。

  雨の日にもっとも注意すべきは足元である。泥で滑って尻餅くらいなら笑い話だが、護岸で足を滑らせて転落となると笑っていられない。コンクリートや岩は晴れた日からは想像もつかないほど滑るようになる。雨の日に護岸で釣りをするなら落水は半ば覚悟した方が良いくらいだ。その他にも、乾いていた時には渡れた場所がいきなりぬかるんで沈んでしまったり、地盤がゆるくなったせいで岸がごっそり崩落したりする事もある。恐いのはリザーバーや川などでの突然の増水である。雨の日には中州などで釣りはしない方がいい。

  知らない人は雷の恐ろしさを軽視しがちである。雷に直撃されればまず生きてはいられない。はっきり言って雷が接近する可能性があるなら釣り場に出かけるべきではない。釣り場で遠雷の轟きが聞こえたなら、どんなに釣れている時でも引き上げた方が良い。雷雲は時にかなりのスピードで移動する。まだ大丈夫などと考えているとえらい目に合う。カーボンロッドは雷の大好物なのだから。

  特に釣れる雨の日は、晴天が続いた後の降り始めの雨である。減水傾向にあり、水が澱んでいるようならば雨は爆釣の起爆剤になり得る。逆に、長雨が続くとバスの活性は低下しがちである。面白いのは春、まだ水温が上がりきっていない季節の雨である。この時期の雨はマイナス要素だと考えがちだが、意外に釣れる。台風の接近直前にでかいのが釣れると言う伝説があるが真偽のほどは定かではない。

  はっきり言って僕だって雨の日は釣りなどしたくない。雨の日に必ず爆釣するとは限らないのだ。ずぶ濡れになりながらロッドを振り回しているといったい自分は何をやっているのかと我に返りそうになることもある。しかし、自然と同化することこそ釣りの醍醐味と言うべきではないか。雨に濡れながら釣りをしていると自分が一本の雑木と化したような不思議な気分に成る事がある。なんかこれこそフィッシングちゅー感じだなぁという満足感を味わったりもする。まぁ、錯覚かもしれないが。

  ただし、大雨の日にボウズを食らうことほど馬鹿馬鹿しくて空しくて無駄なことは、そうは無いということも、また確かなのではあるが。




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